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Out of control ⑲

 そこで、涼がちょっと間を置いてから再び口を開いた。 「……許してあげねぇの?」 「…………」 「まあ、確かにバカみたいに短絡的な行動だったとは思うけどさぁ。これも結局、晃良くんが好き過ぎてやったことじゃないの?」 「……好き過ぎてやることなのか? 人の愛を試すのって」 「確かめたい気持ちは分からんでもないけど。自分が好きで、相手も自分が好きだって信じてたってほんとのところは分かんないじゃん。それに晃良くんの場合、拒否ってるわけだし、遠距離だしさぁ。不安に思うこともあるんじゃね?」 「……あいつが不安に思うわけないだろ。ストーカーはそんな思考してねぇよ」 「まあ、でもさ。晃良くんも、今日ので分かったんじゃないの?」 「……何が?」 「本当の自分の気持ち。あん時の晃良くん、いつもの晃良くんじゃなかったし」 「…………」  自分の気持ちなんてとっくに分かってはいる。とっくに認めてはいる。だが、それを周りには悟られたくなかったのに。自分の中だけに留めておきたかったのに。今日の出来事のせいでもうきっと涼にも尚人にも誤魔化しは利かないだろう。それでもやはり、今の段階で堂々と気持ちを認めたくはない。 「人って、相手次第であんな感情がコントロールできなくなるもんなんだな」 「……なんだよ、それ」 「なんか、うん、凄ぇなって思った」 「…………」 「まあ、なるべく早く仲直りしてよ。空気悪くてこっちが気ぃ使うわ」  あ、そうそう。そう言いながら、涼が手にしていた小さな包みを持ち上げた。 「これ。俺の車に忘れてた」 「あ……」  涼の手にあるのは、今日ショッピングセンターでふと思い立って手に入れたモノだった。涼がそのまま机の上に置いた。 「渡せるといいな」  にやりといやらしい笑顔を見せながら涼が出ていった。  そんな簡単じゃねーの。  と心の中で呟く。  その夜。晃良は嫌がる涼に頼み込んで涼の部屋で一緒に寝させてもらった。いつもなら猛烈な抗議が黒埼から出そうなものだったが、黒埼はしゅんとして全く異を唱えなかった。隣で有栖が、当然でしょ、という顔で黒埼を見ていたこともあるのかもしれない。  晃良の部屋で1人寝る黒埼はどんな気持ちなのだろう。布団の中で考える。まさか、勝手に色々と物色されていなければいいが。変態黒埼ならあり得る。涼がわざわざ届けてくれた例の買い物袋は隠しておいたけれど。  不思議だった。黒埼と寝る時は直ぐにでも寝られるのに。涼と寝ていると(もちろん後ろから抱き締められたりはしないが)なかなか寝付けなかった。  そんな事実も今の晃良には不本意でしかない。晃良は意地でも寝てやるっと思いながら、目をぎゅっと瞑って羊を数えた。

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