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Out of control ⑱
その後、自宅へ帰る間、晃良は一言も黒埼と口を利かなかった。ショッピングセンターに一旦寄ってレンタカーを拾う時も、涼の車に同乗して黒埼に1人で運転させた。
「黒埼くん!! 無事で良かった!」
「ほんとにガッちゃんは。簡単に人について行っちゃダメだっていつも言ってんのに」
「いや、有栖くん、ついてったんじゃなくて、拉致だから」
「え? 知らない人といるんから一緒だよね?」
「どうかな……」
そんなくすりとも笑えない夫婦漫才みたいな会話をしていた尚人と有栖も、黒埼と晃良の間に感じるどこか不穏な空気を感じ取ったらしく、夕飯もその後の団らんもなんとなく静かな雰囲気の中、時は過ぎていった。
晃良は食事を終えた後、早々に自室へと引きこもった。今夜はどうしても黒埼と和やかに過ごせる気分ではなかった。
自分が必死で抑えてきた感情を思わぬ形で露見してしまったのは辛かった。もちろん、言葉で伝えたわけでも肯定したわけでもない。これからだってはっきりとさせるつもりもない。けれど、今日の動揺した自分は、黒埼のことをどうでもよいなどと思っていないことを示すには十分だっただろう。それを黒埼に半ば騙されたような形で周りに知られたことも嫌だった。
黒埼は、晃良の怒りが尋常ではないと思ったのか、いつものような強引さは見せず、晃良と距離を置いて様子を窺っているようだった。
自室で読みかけの小説を読んでいると。こんこん、とドアがノックされた。黒埼だと嫌なので無視をしていると。
「晃良くん、俺。入るよ」
涼の声がしてドアが開けられた。
「返事しねぇから寝てんのかと思った」
「ごめん。黒埼かと思ったから」
「あの人、めちゃくちゃ落ち込んでるよ。さっき、有栖くんに凄い勢いで怒られてたし」
「ジュンが?」
「うん。『いくら愛を確かめたくても、やっていいことと悪いことがある!!』って。有栖くん怒ると怖いよな」
「敵に回さん方がいいタイプだぞ」
「そうだな」
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