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Out of control ⑰
涼が黒埼に尋ねた。
「……こいつら、なんなの?」
「俺が裏で何してるか知りたかったみたいだけど。素人に毛が生えたようなやつら雇って、随分舐められたもんだわ」
「雇い主は分かってんの?」
「ん。ちょっと脅したら簡単に吐いたから。向こうの記者だった」
「で、わざと捕まって、晃良くんに助けてもらおうと思ったわけ?」
「そう」
「……なんか……考えがバカっぽいな」
「……酉井くんって口悪いね」
そんな2人の会話は頭に入ってこなかった。黒埼が無事だった安堵と、黒埼に試されていたショックと怒り。色んな感情がぐるぐると回って麻痺したように動けなかった。いくら変態で我儘の黒埼に慣れてきたとしても。こんなある意味だまし討ちみたいなことは許せなかった。
「アキちゃん?」
先ほどから全く喋らない晃良に気づいて、黒埼が声をかけてきたが答えなかった。
「どうしたの?」
そう言って近付いてくる。
「……こっち来んなバカ野郎……」
「……怒ってる?」
そう言われて、きっと黒埼を睨み付けた。睨み付けた途端、涙腺が緩みそうになるのを必死で堪えた。黒埼がはっとした表情で晃良を見た。そのまま黒埼を睨み続ける。
「……俺、尚人に報告してくるわ」
様子を見ていた涼がそう言って、倉庫を出て行った。黒埼が優しい声で晃良の名前を呼ぶ。
「アキちゃん」
「…………」
「……ごめん」
「……心配した……」
「うん……ごめん」
「ほんとに……お前になんかあったらと思って……」
黒埼が距離を詰めてきた。優しく抱き締められる。そのままの姿勢で、黒埼の胸に向かって悪態をついた。
「アホ黒埼」
「うん……そうだな。俺、やり過ぎた。ごめん」
「そんな簡単に許さねぇからな」
「……うん、ほんとにごめん」
「何回謝ったって、ダメだからな」
それから。涼が2人を呼びにくるまで。抱き締められた状態のまま、黒埼への悪態と晃良への謝罪は止まることなく繰り返された。
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