143 / 239
Ready to fight ①
凍えるような寒さの冬を越えて、少しずつ暖かな日が増えてきた3月。晃良のいつもの1日がいつものように始まる。
定時に起きて、服を着替える。今日は休みの日なので仕事着の黒スーツではなく、ジーンズに薄手の長袖ニットを身に着けた。自室を出て、リビングへと向かうと、珍しく涼がすでに起床してダイニングテーブルで牛乳をすすっていた。テレビでは契約している有料チャンネルの国際ニュースが流れている。これもいつものことだ。
「おはよう」
「おはよう」
「早いな」
「ん。今日集合が早いんだよ」
「そうか。大変だな」
「その代わり昼までだけどな。晃良くんは休みだろ?」
「うん。2週間ぶり」
涼と会話を続けつつ、コーヒーを淹れた。尚人は、仕事や特別な用事がない限り朝早く起床することはない。確か今日は午後から仕事だったはずなので、まだベッドの中だろう。
仕事は忙しかったが、ここのところ平和な毎日が続いていた。相変わらず黒埼からは毎週花束が届くし、電話やらメールやら、気まぐれに連絡もあった。黒埼と再会して約半年。そんな毎日が当たり前の毎日に変わりつつあった。それが晃良にとって喜ばしいことなのかはよく分からなかった。
前月のことで、隠しておきたかった晃良の黒埼に対する気持ちは、尚人と涼(と有栖)にバレバレになってしまったのだが(黒埼は晃良の気持ちは自分にあると初めから疑っていないストーカー野郎なので置いておく)、それでも晃良は変わらず否定し続けることを徹底していた。
ともだちにシェアしよう!