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Ready to fight ②

『……まだ自信ないから』  尚人になぜそこまで気持ちを否定するのかと問われた時。晃良はそう答えた。それは正直な気持ちだった。今の自分なんて、黒埼の記憶の中にいる『アキ』にはとうてい敵わない。  尚人はそれ以来、このことについては触れてこなかった。涼も尚人から事情は聞いたのか、晃良と黒埼については深いことは何も聞いてこなくなった。  過去のことを思い出さなければと思うのに。それを思い出したくないと思う自分がいる。2人の過去を理解して受け入れたいと思うのに。そんなことは無理だと否定する自分がいる。  それもこれも。自分の気持ちが歯止めをかけているからだ。昔の自分に嫉妬して、うじうじと悩む自分が。思い出す努力をすると約束したくせに。躊躇(ちゅうちょ)して動けなくなっていた。その点については黒埼に申し訳なく思っている。  ただ、時々黒埼と過ごすようになって過去のことを夢で見ることは増えた。相変わらず、幼い頃の2人が一緒に寝ている場面ばかりだったが。  一体自分はどうなるのだろう。どうすればいいのだろう。考えに考えたがスッキリとした答えは出てこなかった。 「今日は来んのかな、あの人」 「あの人?」 「黒埼くん。晃良くんが休みん時はほぼ現れるじゃん」 「ああ……そうだな」 「どこでどう晃良くんの予定把握してんのだろうな」 「それについてはもう考えないようにしてる」 「ひくけどさぁ、だけど、毎月、飛行機乗ってアメリカから会いに来るってよっぽどだよな」 「……そうか?」 「そうじゃん。晃良くんだって経験あるから分かるだろ? 国(また)ぐのって時差もあるし、移動も大変だし。なかなか体力要るじゃん」 「……そうだな」  そこで、いつもならばあれこれと2人の関係を遠慮なしにツッコんでくる涼が、ふと黙った。微妙な空気が漂う。涼からすれば煮え切らない晃良の態度は理解できないのかもしれない。けれど、晃良がこの話題を避けたいという気持ちを尊重してくれており、そっとしておいてくれる。そんな涼に晃良は感謝していた。ふと2人で黙ってコーヒー(涼は牛乳)をすすった瞬間。 『ヒョウガ・クロサキ・マクドナルドの……』  ん?

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