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Ready to fight ⑭
「だけどな。俺にはまだ妹がいるし。あん時は本当に俺がこの世で一番不幸だと思って、何にも考えずにのほほんと生きてる同級生とか凄え憎かったけど。他人のこと憎んでもなんもならねえし、自分より大変な人だっていっぱいいるって気づいた」
「そうか……」
「ん。それはな……これ、嫌な意味で言ってるわけじゃないから。晃良くんや尚人に会って、俺と同じぐらいかもっと苦労してきた奴だっていんだな、って思った。俺には家族って呼べる妹がまだいるけど。晃良くんは小さい頃から1人で頑張ってきたんだろうし。尚人だって、家族を捨てて1人になるって相当覚悟いると思うし。そう思ったら、あいつらを憎むのもバカバカしくなった」
「涼……」
「もちろん、だいっ嫌いだけどさ。今でも。さっき会って再確認したし。二度と会いたくないって。だけど、もう自分の境遇を憎んだり、後悔したり、捻くれたりするんは止めようって」
そう言って、涼が軽く笑って晃良を見た。
「自分の過去は変えられないし。逆に言えば、過去だって俺を支配できねえじゃん。だから。過去は過去で受け入れて、先々幸せになることにした。妹はもう大丈夫だと思うけど。俺も、俺なりの幸せを掴んで胸張って生きよう思って」
精悍な顔つきの涼を見て思う。涼も尚人も強いなと。昔は晃良に甘えることもよくあったけれど。いつの間にか下手すると晃良自身よりも強く成長したのかもしれないなと感じた。
今日の尚人との会話で感じた、胸がぐっとくるあの感覚が戻ってきた。
自分は、どうしようもない馬鹿だった。こんな肝心なことを忘れていたなんて。
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