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No matter what ⑪

「アキラ、久しぶりだな」 「ほんとだな。元気だった?」  宿泊予定のホテルへチェックイン後、すぐにクライアントが滞在する予定のホテルへと向かった。クライアントは今夜ホテルへチェックインする予定だった。明日の出発までは別のBGがクライアントに付く予定になっている。晃良は、一緒に行動する予定のBGたちとの打ち合わせのために、ホテルのロビーへとやってきたのだ。  チームは晃良も含めて3名。同じエージェントの仲間たちなので、お互いの顔は見知っているし、何度か仕事も一緒にしているため、チームワークに対しての不安はなかった。懐かしい面々との再会を楽しんだ後、明日の打ち合わせをして、そのまま夕飯でも食べようかという話になり、ホテルを出る。  楽しく会話をしながらホテル近くのパブへと入った。日本からきた晃良に出させるのは忍びないと仲間のおごりでビールを渡される。 「ありがとう」  アルコールが揃ったところで、乾杯をしてビールを飲み始めたその時。晃良の携帯が鳴った。  あれ?  画面を見ると、黒崎だった。なんだろう? と仲間に断りを入れてから電話に出る。 「もしもし?」 『アキちゃん。今誰といんの?』 「は? ああ、仕事仲間とだけど。明日チーム組むやつら」 『本当に?』 「本当だって。なんで?」 『浮気はダメだから』 「は? するわけないだろ。そういうやつらじゃないし」 『とにかく油断したらダメだから。日本よりこっちの方が押しが強いし』 「はあ……」 『釘刺しとかないと。アキちゃんは誰にでも可愛くするから』 「しないって」  わけの分からない電話を終え、チームの仲間たちに誰なのか聞かれて電話の内容を軽く説明すると、アキラの相手は嫉妬深いんだな、とからかわれた。  いや、嫉妬深いっていうか。変態ストーカーだから。  そう思ったが、それを説明するのは面倒なので言わずにおいた。

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