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No matter what ⑯

 その後も何事もなくパーティーは無事に終了した。クリスを囲みながらホテルへ戻るために高級リムジンへと乗り込む。BGの1人は助手席に座り、晃良含む残りのBGは後部座席にクリスとクリスのスタッフと一緒に座った。  乗り込んだ途端、クリスは大げさに溜息を吐いて、座席に(もた)れた。途端に不機嫌な顔に戻る。 「疲れたぁ。おっさんたち、なかなか解放してくれないしぃ」  ブツブツと言いながら携帯を取り出して弄り始めた。その様子を晃良たちは感情を出さずに眺めていたが、ふとクリスが顔を上げて、晃良の方を見た。 「ねえ、アキラ? だったっけ?」  なんで、俺の名前知ってんだよ。そう思ったが、おそらく事前にBGのリストを見ていたはずだ。そこで自分のフルネームも知られたのだろう。 「はい。なんでしょう?」 「今から暇?」 「え?」 「一緒に呑もうよ、部屋で」 「いや、しかし……」 「いいじゃん。これで仕事終わりでしょ? あ、他の奴らには用はないから。アキラだけ」  斜め前にいたBG仲間が同情的な目で晃良を見た。 「言っておくけど。アキラに選択権はないよ。俺の誘いを断ったら、仕事できないようエージェントに話つけることもできるし」 「…………」  呑みに誘うには随分と高圧的な言い方だった。一体、こいつは自分に何がしたいのだろう。エージェントに云々はきっと半分は嘘だろう。そんな力がクリスにあるとも思えない。しかし、晃良にはどうしても確かめておきたいことがあった。晃良は誘いに乗ることにした。 「……分かりました」 「そしたらぁ、後から部屋きてくれる? 他のスタッフには話しとくから、直接部屋にきてよ」  そう言ってクリスがスタッフの1人に目配せすると、晃良にクリスが宿泊するスイートルームのカードキーが手渡された。クリスが意味ありげに笑った。 「アキラと呑めるの、楽しみだなぁ」

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