そこからは、ただ無我夢中だった。後から思い出すと、まるで高校生のようながっつきようだったなとお互い苦笑いするほどだった。 　けれどもそこに、理性を失ってただ欲望のままに求めるような刹那的な感覚はなかった。黒崎とのセックスは自分が想像していたようなものとは違った。愛撫も、変態黒崎らしく、もっと執拗にねちっこく責められるかと思っていたが。 「ん……あ……あ……」 　ゆっくりと、くまなく、全身を優しく愛撫された。ある意味執拗な黒崎の愛撫だったが、予想に反して小さな波のように穏やかな愛撫だった。晃良の体の隅々まで記憶するかのように、唇と手をじっくりと這(は)わせる。黒崎が検体を調べる時もこんな感じなんだろうか、とふと思った。 「はぁ……あっ……あっ……」 　どれくらい、黒崎の愛撫を受けたのか。晃良の体全体が性感帯になったようだ。どこに触れられても、びくびくと体が反応した。 「……アキちゃん、気持ちいい？」 「ん……黒崎……俺、もう……」 「挿れてほしい？」 「あっ……ん……」 「まだダメ」 「なんでっ……あっ……」 「だってぇ。もっと見たいもん。手と口だけでこんなになるアキちゃん」 「いや、もう……せっかく準備したのに……時間経ち過ぎて意味なくなるんじゃねえ？」 　息も絶え絶えにそう訴えると、ようやく黒崎が動きを止めた。 「アキちゃんの努力を無駄にはできないな」 「だろ。だから、さっさと挿れて」 「……ちょっと、アキちゃん、そんなやっつけ仕事みたいな言い方やめて」 「違う違う、もうほんとに、限界なんだって」 「えー、俺、指入れたい。まず」 「はぁ？　もういいって。十分解れてるって！」 「解れてるかどうかは関係ないよ。指入れて、アキちゃんをアンアン言わせたい」 「出たな。お前の本性が。さっきまでのお前が仏のようだわ」 「なにそれ。とりあえずアキちゃん、セックス戻ろう。だけど、指入れさせて」 「嫌だって」 「えー」 「ああっ、もういいっ！！」 　晃良は我慢の限界だった。勢い良く起き上がるとその勢いのまま黒崎を押し倒した。きょとんとした顔の黒崎を見下ろす。 「俺がやる」 　分かりやすく、黒崎が目をキラキラさせて笑顔になった。 「アキちゃんが？　乗んの？？」 「待てねえって言ってるだろ」 　そう言って、さっさと黒崎に跨(また)がった。 「挿れるぞ」 　そう一応断って、先ほどからかなり元気になっている黒崎の自身を後ろ手に掴むと、自分の孔へとあてがった。角度を調整しながらゆっくりと腰を下ろしていく。