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This is the moment ⑥

「ジュン」 「何?」  きょとんとする有栖の顔を真っ直ぐ見て心を込めて伝えた。 「ありがとう」  尚人を見つけてくれて。 「尚人をよろしくな」  ちょっと、晃良くん、そんな父親みたいなこと言わないでよ、恥ずかしいじゃんっ。とベッドの上でやいやい言っている尚人を無視して、有栖に頭を下げる。数秒後、有栖が近付いてきて、晃良の頭を上げさせると、ぎゅううっと抱き締めてきた。 「ありがとう、アッキー」  色んな意味がこもった『ありがとう』。それを心の中にそっと受け入れる。 「なにこれ。どういうこと?」  後ろから黒崎の声がした。抱き合っている2人とベッドの上にいる尚人を、部屋に入ったところで交互に見ながら、黒崎が怪訝(けげん)な顔をして立っていた。有栖とふふっと笑い合うと、そっとお互いの体を離す。 「なんでもない。それより朝食作ろうかと思ったんだけど、尚人もジュンも食べるか?」 「晃良くん作ってくれんの?」 「うん。いつも尚人に作ってもらってるから。たまにはな」 「久しぶりだよねぇ。晃良くんのスクランブルエッグ食べたい」 「いいよ。ジュンは?」 「食べる~!」 「分かった。そしたら尚人は準備して起きてきて」 「うん」 「……いいなぁ、晃良くんのスクランブルエッグ」  その声で、部屋にいた全員が入り口を振り返ると。物欲しそうな顔をした涼がスーツ姿で立っていた。 「涼も食べたらいいだろ」 「もう行く時間だし。飯も食ったし」 「そしたらまた今度作ってやるから」 「マジで? 約束だからな?? いっぱい作ってよ??」 「分かった」 「じゃあ、俺、行ってくるわ!」  あっさりと機嫌を取り戻した涼は、みなに見送られながら意気揚々と仕事へと向かっていった。

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