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This is the moment ⑦

 朝食を作り、みんなで賑やかに食べた。その後、外出を面倒がる尚人を有栖が引っ張りながら2人はデートに出かけていった。そして2人きりになった途端、黒崎の晃良へのベタベタ攻撃は加速度を増していった。 「ちょ、黒崎! そんなくっつかれたら皿洗いできねぇだろ!!」 「そんなの後でしたらいいじゃん。まずイチャイチャしようって」 「片付け先っ。放っておくの嫌なんだって。ちょっ、もっ、やめろっ」  そんな攻防戦が続く中、なんとか朝食の片付けを終わらせ、洗濯を済ませ、ついでにリビングの掃除もした(この時点で黒崎はかなり()ねていた)。次々とやりたかった家事を終わらせて、晃良の気持ちがスッキリとした時にはもう昼近くになっていた。 「どっか行くか?」 晃良がソファで膨れている黒崎に話しかけるが、黒崎は答えようとしなかった。 「黒崎? ()ねてんの?」 「…………」 「俺も久しぶりの休みだったんだって。尚人と涼は滅多に掃除しないから。どうしても掃除したかったの」 「…………」 「黒崎?」 「……そんなの、イチャイチャしてからでもできたじゃん。久しぶりに会ったのに、アキちゃん、淡泊過ぎる」 「…………」  そんなつもりはなかったのだが。もちろん、黒崎と久しぶりに会えたことは本当に嬉しいし、待ち望んでいたことだった。けれど、自分には自分の生活があって。尚人と涼との暮らしがあって。ずっと前から続いているこの習慣を、いつも一緒にいない、黒崎に合わせることはなかなかに難しいことだと今、気づいた。しかしそれは自分の勝手であり、黒崎にとってははるばる会いにきた恋人が冷たかったら、そりゃ、()ねたくもなるかもしれない。 「黒崎……ごめん」 「…………」  黒崎の隣に座って、そっと黒崎の腕に触れた。 「俺、無神経だった。ほんとに、ごめん」 「……アキちゃん」 「ん?」 「今からイチャイチャしてくれる?」 「ん、いいよ」 「ほんとに?」 「うん」 「ここで?」 「ここ? ソファ?」 「いいじゃん。誰もいないし」 「いいけど、急に帰ってきたらどうすんだよ」 「見せたらいいじゃん」 「……いや、俺、そういう趣味ないから……って、ちょっ、黒崎っ! うわぁ! そんなとこいきなり触るなっ!」  そこから結局、黒崎の我儘変態ペースに無理やり乗せられて、ソファで一通りのイチャイチャをする羽目になったのだった。

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