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This is the moment ⑧

「ったくもう……。どこも汚れてないといいけど……」  事が済んだ後、一緒にシャワーを浴び、服を着てから念入りにソファを調べた。 「汚れたっていいじゃん。何で汚れたかなんて分かんないって」 「……その何で汚れたか分からないソファに毎日座るのは俺らだからな」 「そしたら新しいの買ったらいいじゃん。あ、それかほら、またあげたら? 隣の人に。斉藤さん? だった?」 「斉藤さんだって、男の欲が付いたソファなんて要らねーだろ」 「そう? 案外、喜ぶかもよ? エロそうな顔だったし。フェチとか持ってそうな」 「なんでそんなの分かんだよ」 「いや、なんとなく?」 「女ならともかく男のなんて、嬉しくないだろ」 「男って言わなかったらいいんじゃない?」 「そういう問題じゃない。てか、そこじゃねぇから。まだ使える物を簡単に捨てる考え方がダメなわけ」 「そうだけぉ」 「とりあえず、大丈夫そうだけどな……。落ち着かないし、今後ソファではヤんないからな」 「え~。ソファで俺の上に(また)がってエロく腰動かして(あえ)ぐアキちゃん、可愛いかったんだけど」 「……細かく言うなって、もう……」  とにかく、ダメからな! そう言い放ち、コーヒーを煎れにキッチンへと向かう。コーヒーマシーンにコーヒー豆をセットしながら、ふと思い立って黒崎へと尋ねる。 「なあ。そういえば黒崎は知ってたのか? 尚人とジュンのこと」  真剣にテレビを見ていた黒崎がこちらを見た。 「ジュンと久間くん? 知ってたけど」 「そうなの? ジュンから聞いたのか?」 「違う。『アキちゃんボイス』で何回か聞いた。2人の会話とか、久間くんの電話とか」 「ああ……そうか」 「だけど、俺、アキちゃんパートしか興味ないから、録音の時はほぼ飛ばしてたけど。生の時はアキちゃん待ちで聞いたりしたけど」 「お前、全然知ってるような態度してなかったじゃん」 「そう? まあ、他の恋愛事情とか興味ないから」 「……お前らしいな」

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