204 / 239
This is the moment ⑧
「ったくもう……。どこも汚れてないといいけど……」
事が済んだ後、一緒にシャワーを浴び、服を着てから念入りにソファを調べた。
「汚れたっていいじゃん。何で汚れたかなんて分かんないって」
「……その何で汚れたか分からないソファに毎日座るのは俺らだからな」
「そしたら新しいの買ったらいいじゃん。あ、それかほら、またあげたら? 隣の人に。斉藤さん? だった?」
「斉藤さんだって、男の欲が付いたソファなんて要らねーだろ」
「そう? 案外、喜ぶかもよ? エロそうな顔だったし。フェチとか持ってそうな」
「なんでそんなの分かんだよ」
「いや、なんとなく?」
「女ならともかく男のなんて、嬉しくないだろ」
「男って言わなかったらいいんじゃない?」
「そういう問題じゃない。てか、そこじゃねぇから。まだ使える物を簡単に捨てる考え方がダメなわけ」
「そうだけぉ」
「とりあえず、大丈夫そうだけどな……。落ち着かないし、今後ソファではヤんないからな」
「え~。ソファで俺の上に跨 がってエロく腰動かして喘 ぐアキちゃん、可愛いかったんだけど」
「……細かく言うなって、もう……」
とにかく、ダメからな! そう言い放ち、コーヒーを煎れにキッチンへと向かう。コーヒーマシーンにコーヒー豆をセットしながら、ふと思い立って黒崎へと尋ねる。
「なあ。そういえば黒崎は知ってたのか? 尚人とジュンのこと」
真剣にテレビを見ていた黒崎がこちらを見た。
「ジュンと久間くん? 知ってたけど」
「そうなの? ジュンから聞いたのか?」
「違う。『アキちゃんボイス』で何回か聞いた。2人の会話とか、久間くんの電話とか」
「ああ……そうか」
「だけど、俺、アキちゃんパートしか興味ないから、録音の時はほぼ飛ばしてたけど。生の時はアキちゃん待ちで聞いたりしたけど」
「お前、全然知ってるような態度してなかったじゃん」
「そう? まあ、他の恋愛事情とか興味ないから」
「……お前らしいな」
ともだちにシェアしよう!