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This is the moment ㉔

 4人組が橋の反対側に再び姿を見せた。こちら側へ周囲を伺うように戻ってくる。 「過ぎたらやる」 「了解」  なんとも言えない緊張感が晃良を包む。相手はおそらく武器を所持しているだろう。こちらは素手なのでかなり不利だ。どれだけ最初に相手の戦力を落とせるかが重要になる。気配をできる限り殺して相手が岩場を完全に過ぎるのを待った。  黒崎と目が合う。軽く頷いた。  3。2。1。  ほぼ同時に2人とも岩陰から飛び出した。4人組が驚いて振り返る。晃良は自分から一番近い男へと襲いかかった。持っていた傘を銃剣の要領で胸から真っ直ぐ前に構えてそのまま相手の胸に向けて突き出した。男は不意を突かれてもろに晃良の突きを受け、うめき声を上げてうずくまるように体を曲げた。  晃良は勢いを緩めず、そのまま相手と距離を縮め、傘を男の背中へ振り落とした。傘が綺麗に半分に曲がる。その傘を放り投げると、男の首へと後ろから腕を回した。頸動脈(けいどうみゃく)を意識して絞める。数秒で男の体から力が抜けてそのまま崩れ落ちた。5秒ぐらいのことだった。  が、相手側も素人ではない。その5秒の内に男の1人に後ろに回られた。背中に銃口らしきものを突きつけられる。晃良の目に、1人の男に対し銃を抜かせないよう上手く間合いを取りながら、間髪入れずに拳を突いている黒崎の姿が入った。雨で足場が緩いため、いつものような機敏な動きは黒崎であっても難しいようだった。それでも足下には黒崎が始末したであろう男がすでに1人倒れていた。  後ろを取られて、銃を押さえ付けられては為す術もない。晃良は両手を降参するように持ち上げた。相手の男の緊張が少しだけ緩んだ一瞬を逃さなかった。素早く体を反転させて、左手で相手が持つ銃の左側を掴んだ。と同時に相手の右側へと体を入り込ませる。入り込ませながら、銃口を相手へと向けるように男の手を捻る。そのまま右手も添えて、力を緩めることなく捻り続けた。男の指の骨が折れる感触がして、男が叫び声を上げた。  銃が落ちる。その銃を素早く蹴って男から離した。そのまま男のみぞおちに蹴りを入れると男は地面へ座り込むように倒れた。  それとほぼ同時に、黒崎が最後の1人に見事なアッパーを入れるのが見えた。男はそのまま後ろへ倒れ込む。  晃良は黒崎の方へ向かっていった。 「大丈夫か?」 「ん。ちょっと時間はかかったけど」  そう言いながら、黒崎がかがんで意識を失っている男たち2人の銃を拾い上げ、弾を抜いた。それを見て、しまった、と思う。銃の弾を念のために抜くのを忘れていた。  向かい合っていた黒崎の顔が、晃良の後方を見てはっと驚くのが分かった。晃良が振り返ると、先ほど晃良が指を折った男がゆっくりと立ち上がるところだった。左手に銃を握っている。  左も使えたのか。  そう今更思っても遅い。男が血走った目でこちらを見た。その時。 「え?? 何??」  ふいに声がしてそちらへ顔を向ける。晃良と黒崎が(たたず)む背後の橋のたもとに、親子連れが立っていた。ハイキング帰りの母親と小学生くらいの女の子。見たことが信じられないような顔をして呆然としている。  この2人を巻き込むのは避けなければなけない。しかし、男はこの状況を見られた以上、この親子も始末しようとするだろう。晃良は咄嗟(とっさ)に判断し、自分が(たて)になろうと男の方へ走り出した。が、それよりも早く黒崎が動いていた。

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