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第40話 甘やかな口づけ※
顔を赤らめて苦悩するお兄様に僕はギュッと抱きついた。
「お兄様、僕はお兄様を困らせてるの?
僕はただお屋敷に帰って来られないくらい忙しいお兄様を癒やしてあげたかっただけなんです。」
お兄様は僕の頭にチュっと口づけると、僕の髪を撫でながら言った。
「いつも甘えん坊なリオンが、今日は私を甘やしてくれるんだね。嬉しいよ。
もうすぐお昼に行かなくてはいけないんだけど…、最後にひとつお願いがあるんだ。
リオンから私に口づけてくれるかい?」
お兄様は眉を片方だけ上げた悪戯っぽい顔をして、ソファに座り手を広げて僕が来るのを待った。
いつもとは違う表情のお兄様に、僕は急に恥ずかしくなってしまった。
両手で顔を覆い、指の隙間からクスクス笑うお兄様をチラ見して口を尖らせた。
「…お兄様のいじわるっ。」
お兄様はグッと息を呑むと上を向いて何かに耐えている様子だった。
僕は心配になってお兄様の側に駆け寄ると、お兄様に引き寄せられスッポリと膝上に捕まってしまった。
「リオン、甘やかしてくれるんだろう?」
お兄様の甘やかな瞳から目を晒すことができず、僕は首に手を回してゆっくりと口づけた。
お兄様の唇は少し冷たくて濡れていた。僕は唇を押し付けてその柔らかさを楽しんだ。
お兄様は僕を真似て同じようにしてきたので、段々うっとりしてきた僕はお兄様の唇を舌でゆっくり舐めてさすって隙間を突ついた。
お兄様は甘く息をつくと口をゆっくり開けて僕の舌を誘いこんだ。
夢中になって僕たちは舌を絡めて口づけを楽しんだ。
僕は初めて自分がリードして口づける楽しさを知った。
翻弄されて頭が痺れるような口づけも嫌いじゃないけれど、ゆっくり確かめ合う甘やかな口づけも胸いっぱい幸せな気持ちになるんだ。
「僕、今幸せすぎるかも…。」
お兄様は急に慌ててソファから立ち上がるとカフェへ行こうと、僕を急かした。
『これ以上ここにいたらヤバい…。マジで。』って言ってた様な気がするけれど、空耳だと思う。
麗しいお兄様がそんな乱暴な言葉言うわけないし。うん。
それからお兄様は僕の身だしなみを念入りにチェックをして、お昼を食べにカフェテリアへ連れて行ってくれた。
寮を出る時に入り口に学生が集まって騒ついていたんだけど、僕たちを見るとピタリと口をつぐんでこちらを凝視してきた。
僕は部外者がここに居てはいけなかったのかとちょっと焦ってしまった。
皆僕よりひと回りも大きくてしかも知らない人ばかりだったので、戸惑いながも小さな声で挨拶をした。
でも彼らの声を聞く間も無く、僕は顰めっ面のお兄様に拐われるようにその場を立ち去ったんだ。
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