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第49話 武術の時間だよ
新学期が始まってようやく武術の時間が始まった。
一応貴族令息として一年生は全員武術の授業がある。
簡単な剣捌きや、馬術、弓術、戦術とか。今日は先生が僕たちの身体能力を測るべく体術をやるらしい。
僕はお屋敷では剣を振るったり、馬に乗ったり、走ったりは経験あるけれど、…体術。
ん。全く予想がつかない。でも楽しみだなぁ~。
おろしたての真っ白な上着とボトムスはぴったりしているのに伸びが良くて動きやすい。これ結構好き。
お部屋でユア様が『体術…。まさかな、いや…。』ってブツブツ言いながら眉間に皺寄せてたけどね。
相変わらず色々心配性なんだよね、ユア様は。ふふ。
『それでは二人一組になって組み手を行う。最初は体格の似た者同士で組む事。
この体術は殴ったり蹴ったりする以外は何をしても良いので、参ったと言わせた方が勝ちだ。
ちなみに勝った者は勝者同士で戦って、最終的に1番の勝者を決める事とする。
無理はしない様に。では、組めた者から始めなさい。」
先生の説明が終わった瞬間、大きくざわめいた。何だか僕凄く見られてる…。
ま、いっか。えーっと僕に似た身体つきは…リチャード様、君に決めた!
「リチャード様、僕と組みましょう?」
ギコギコと軋む様に振り返ったリチャード様は何も言わずにコクコクと頷いた。
向かい合って間合いを取りながら、彼が僕の肩を掴もうとした瞬間、彼は仰向けで転がっていた。
「…参った…?」
リチャード様も何が起きたのか分からずキョトンだ。
「リオン様凄いです!」
周囲で見てたクラスメイトがわっと盛り上がった。
アーサーはキースの顔を見て言った。
「アレが出たんだな。アレが。リオン様はどうやってるか分からないけれど、鬼ごっこでもスルリ、スルリと何だか身体が捕まらないというか、かわされたよな。
相当体格差がないと無理だよね、あれは。」
僕は体力はあんまり無いけど、逃げ足とすり抜けは無意識に出来ちゃうんだ。
あと僕を無理矢理捕まえようとすると、相手の方が転んでたりする。
今も相手の腕を掴んだところまでは意識あったけど、その後どうやったのかは自分でも分からないんだ。
もしかして、時々感じるもう一人の自分?が勝手にやってるとか?
うわっ、それはそれで怖いな。ホラーだよ、ホラー。自分が怖いぃー。
「次は僕とお願いします!」
最初遠巻きにしてたクラスメイト達は急にわらわらと僕に群がってきた。
いや君たち、まず組み手に勝ってからでしょ。もぅ。
それから僕はコツコツ勝って、残りのメンバーになった!ワオ、快挙じゃない~?
『どうだった?』
『ヤバいヤバいっ、凄い甘いイイ匂いするし、可愛いし、近いし。』
『俺なんて睨まれちゃったもんね。はぁイイッ!』
僕は負けたクラスメイト達が、こんな会話を繰り広げてたなんて気づきもせずに浮かれてたんだよね。
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