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第56話 湖
キラキラ光る水面に僕たちは歓声を上げた。
演習目的地が学院の敷地内だと聞いていたので、僕たちが油断してたのは間違いなかったけれど、しんどい。只々しんどい。
学校の敷地の広さをなめてました。
もはや行軍としか言わんかな?僕たち一年生はヘロヘロになって座り込んで暫く動けなかった。
2、3年生は流石に経験もあるし身体も成長していて、僕たちを懐かしい気持ちで見守ってくれてたっぽい。
先生が夕方まで休憩の指示を出したので、僕たちは喜び勇んで水浴びに行った。
僕たちはあっという間にボンクス一枚になって浅瀬で汗を流した。
僕は本当に、ほんとうにうっかりしてた。何も考えてなかったんだ。
久しぶりの水辺に気分が上がってた。ただそれだけだった。
僕は気分良く透き通る様な湖を夢中で楽しく泳いだり、潜ったりした。
ふと陸を見ると、皆が僕のことを呆然と見つめていた。
僕はその瞬間自分がやってしまった間違いに気づいた。
岸に戻るのも気まずくて、僕は思い切り息を吸い込むとグングンと潜って皆と離れた場所にこっそりと上陸した。
僕が水面から上がってこないことにザワついてきてたけれど、僕は忍足で脱いだ服を掴むと脱兎のごとく走り出した。
後ろで『あ、リオン!リオン様待って!』って聞こえたけど、もう止まれないよ。
まずいよ。本当まずい。普通は泳げないのに。人魚しか泳げないのに。バレた?ばれたよね?どうしよう!
「なぁ、あれ、逃げてくのリオンだよな?…さっき湖で泳いでた人魚みたいの、リオンだよな?」
「ああ、リオンだな。やっぱり人魚がリオンに似てるんじゃなくて、リオンが人魚なんだよな?」
『リオン様が…、人魚。』『リオン君が人魚?』
皆が興奮して一段と騒がしい。僕は湖から離れた場所でサッと着替えた。
ボンクスは濡れてたので脱いでノーボンクスだ。もうヤケだ。ふん。
どうして良いか分からず不貞腐れて隠れていると、目の前にリッチー先輩がいた。
「…リオン君、皆のところに戻ろう。」
僕は首を横に振った。気まずくて皆のところには戻りたくない。
「…先生の許可はもう取ってあるんだ。
しばらく皆が落ち着くまで僕が君のこと隠してあげるよ。こっちだ。」
僕はユアやキース達が心配してるだろうと分かってたけれど、どうして良いか分からなくてリッチー先輩の差し伸べる手を取った。
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