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第60話 さらけ出した感情
僕たちは緊張しながら見つめあった。
部屋のソファにユアは座り、僕はその前に立っていた。
「ユア、僕分からないんだ…。
ユアが僕を大事に思ってくれているのは良くわかってるし、僕もユアのことが大好きで、大事だよ。ホントだよ?
でも僕はお兄様も…愛してるし、大事なんだ。
僕には二人を比べる事も、捨てる事も出来なくって…。
随分勝手な事を言ってるって自分でも嫌になるし、ユアと同じだけの気持ちを返せなくて後ろめたいんだ…。」
僕はそこで少し躊躇ったものの、今回こじれた一番の地雷を踏み抜くことにした。
「それに…今回僕はリッチー先輩に慰めてもらった。
感情的に切羽詰まってたとはいえ、自分が嫌になってしまうくらい流されやすいってのはわかってるつもり…。
そんな僕を許せる?…僕の側に居るのは、辛い?」
ユアは俯いて、膝の上の手をグッと握りしめた。
「…正直、僕はリオンに怒ってるのか、自分に怒ってるのか、リッチー先輩に怒ってるのか自分でもよくわからない。
わかるのは胸を焼く痛い気持ちと、リオンを好きすぎて苦しいってこと…。
こんな気持ちで側に居たら、僕、リオンにいつか酷いことをしてしまいそうで、自分が怖いんだ。
それに…リオンは、僕が他の子と口づけたり、抱き合ったりしても…許せる?」
僕はユアの前に跪き硬く握られた大きな手を握りしめた。
「ぼく、許してくれるならこれからもユアに側に居てほしい。ユアが僕に酷いことしてもいいよ。
ユアが他の子と口づけたらって考えただけで泣きたくなっちゃうけど…。
でも僕はユアを十分傷つけてるから、そんな事があったとしても我慢する…。
ユアがこれ以上僕の側に居られないって我慢出来なくなるまで、僕の側にいて…。お願い。」
僕はポロポロ泣けてきた。ユアが他の子とイチャイチャするなんて想像したことがなかった。
その時ユアの言う胸の焼ける様な痛い気持ちを理解した気がして、自分の身勝手さにますます落ち込んでいった。
「僕は…他の子と口づけても我慢するなんて、リオンに言って欲しくない!
許さないって言って欲しいんだっ。」
ユアは僕を強い眼差しで射すくめると僕の肩を掴んで揺さぶった。
僕はぼろぼろと泣きじゃくりながらもう何が何だか分からなくなってしまった。
「…許さない。…ユアは僕のものだからっ、他の子には渡さないっ。決まってるじゃないかっ。」
「…リオン!僕にはその言葉だけで充分だよ…。僕にはリオンだけだから…。」
そう言うとユアは僕をぎゅっと抱きしめた。
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