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第78話 お兄様の爆弾発言
二人でベッドに微睡みながら、僕が意識の片隅で聞いた鐘の音は夕食を告げる合図だと気づいた。
部屋のシャワーで身体を軽く身綺麗にした後、僕はお兄様の膝の上でまったりとレモン水を飲みながら、会えなかった間の事をあれこれ語り合った。
もっとも僕は気怠くて指一本動かしていない。お兄様が嬉しそうに全てやってくれた。
「リオン、そろそろ私は帰らないといけない。夕食も食べ損ねたし、今日は一緒にお屋敷に帰るかい?
私も帰国して王宮で挨拶して直ぐにリオンに会いに来たから…。」
お兄様は僕のこめかみに優しく口づけると僕の手を握った。
僕は甘々なお兄様に蕩けていて、盲目的に頷いた。
「あぁ、そんな可愛い顔したらこの部屋から出られなくなってしまうよ。僕の居ない間に恐ろしいことになってるね。」
僕たちは二人で寮から出て、用意されていた馬車に乗り込むとお屋敷に向かった。
遅い時間だったが、その姿を何人もの高等生が見つめていた事には気づく事もなかったけれど。
お屋敷ではお父様、お母様がお兄様の帰りを喜んで、話の尽きることが無かった。
三年と言う時間は、貴族の親としても十分に長い離別だったんだろう。
「ほんとに、リオンはリュードが居ればこうやって直ぐにでもお屋敷に帰ってくるのね。
普段はせっついても中々帰ってこないのに。」
お母様が口を尖らせて僕を睨みつけると皆で弾ける様に笑った。
僕はふと、お兄様があっという間に留学して行って、呆然と悲しみに放り出されたかつての日々を思い出した。
お兄様の胸にしがみつくと、潤んでしまった目を瞬かせて言った。
「お兄様、もう僕の側を離れてしまっては嫌です。あんな辛い思いはもうしたくないの…。」
お兄様は指先で僕の顎を持ち上げると、強い眼差しで見つめて言った。
「私も二度とリオンの側を離れるつもりはないし、離すつもりもないよ。
いい機会だからリオンにも、お父様にもお母様にも私の考えを言っておきます。
私はリオンと結婚するつもりです。…どんな形であれね。
リオンを手放して生きていくことは私には出来ないんです。」
僕は驚く様な、当然に思っていた様なボンヤリする気持ちでお兄様を見つめていた。
「びっくりしたかい?リオンはまだ若い。だから今ここで返事は必要ないよ。ゆっくり考えてくれていいんだ。
私の気持ちを知って欲しかっただけだから。」
お兄様はちょっと困った様にはにかむと僕を優しく抱きしめた。
抱き合う僕たちの目の前でお父様とお母様が、顔を見合わせて、やっぱりちょっと困った顔で優しく微笑みあっていた事には気付かなかった。
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