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第80話 美丈夫の存在感
授業が終わって片付けている僕の席の前に、移動教室から戻ってきたユアが立ち塞がっていた。
「…今朝、居なかったな。」
僕はちょっと後ろめたい気持ちでユア見上げた。
「…うん。昨日リュードお兄様が帰国したから、一緒にお屋敷に帰ってたの。昨日は家族と一緒に過ごしたから。
連絡しなくてごめんね。研究室寄ったりして遅くなっちゃって。」
ユアはちょっと顔を引き攣らせた後、黙って僕の手元を見つめていた。
「…ユア? これから一緒にお昼行くんでしょ?」
「…ちょっと冷静になりたいから、夕方部屋に行くよ。…それでいいか?」
そう言うとユアは僕の顔を見ること無く足早に立ち去った。
僕が呆然とその後ろ姿を見送ってると、アーサーとキースがいつの間にか隣に立って同じ様にユアを見ていた。
ちょっと静かに話せるところでご飯を食べようと言われ、三人でカフェテリアの池の近くの東屋に来た。
今日は少し暑いのでほとんど人気が無かった。
「…リオン、まぁアレだよ。ユアも昨日の今日で動揺してるって言うか。リオンの兄君帰ってきたんでしょ?
ユアにも覚悟がいるんだよ色々とね。相手強いからねぇ。」
話すアーサーの顔を訝しげに見ると、苦笑したキースが僕の額を指で軽く弾いて言った。
「リオン全然ピンと来てないし。ちょっと噂になってんだよ。
昨日の夜、どえらい美丈夫がお前を寮から連れ出したって。すっげえ甘々な雰囲気で、な。
それで兄君が帰国とわかれば、ユアも冷静では居られないだろ?まぁわかってやって。」
僕は思わず目を伏せて、昨日のお兄様と、お兄様の爆弾宣言を思い出した。
「…昨日、お兄様に言われたんだ。お兄様は僕と結婚するつもりだって。」
「あー。まぁいつかそう来るとは俺たちも思ってたけど。帰国早々なんだ。兄君も三年は長かったんだな…。」
「で、どうするつもりなの?」
「お兄様はゆっくり返事していいって。僕…は、お兄様は置いといても、結婚自体考えた事なかったから。
ちょっとびっくりした方が大きくて。」
アーサーとキースは顔を見合わせて言った。
「お前知らなかったの?お前に結婚の申し込み、鬼来てるって。有名な話なんだけど。皆ダメ元で申し込んでるって。
…なるほど。スペード伯爵が握り潰してた訳ね。白騎士団長もリオンの事溺愛してるもんなぁ。」
キースの言葉に僕は唖然としてしまった。え?聞いてない。結婚の申し込み?
「スペード伯爵も閨の勉強終わったら、改めてリオンと話するつもりだったんじゃないの?
アレが終わらないと進む話も進まないからね。
このままじゃ、ユアも可哀想だからじっくり二人で話あってね?」
アーサーは僕の頭を撫でながら優しく言った。
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