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第81話 ユアの激白

「…リオン、入るぞ。」 約束した通りにユアは僕の部屋を訪れた。 ユアが一緒の部屋にいるのは学院時代いくらでもあったのに、何だか今夜は妙な空気…。 ユアも変だし、僕も緊張してると言うか…。アーサー達が余計なこと言ったせいかも。 ユアはソファに座ると大きく深呼吸して、僕を真っ直ぐ見つめて言った。 「昨日、リュード様帰国したんだね。俺はこの日が来るのを覚悟してたんだ。 でも昨日の噂を聞いて、今日のリオンの顔を見て、そんな覚悟は木っ端微塵になってしまった…。 リオンが三年間リュード様に会えないから、リオンとリュード様の関係も変わったと思った。 いや、変わればいいと願ってた。 俺の側にいるリオンは幸せそうだったし、俺の事を多分愛してくれてるって思ってたし。 でも、今は自信がない。そんな申し訳なさそうなリオンの顔を見たら、俺は…。」 ユアは苦しそうに言い放って、顔を覆って俯いた。微かに肩が震えていた。 僕はゆっくりユアに近づき跪き、大きな身体に精一杯腕を回して抱きしめた。 「ユア。苦しまないでユア。言ったでしょ。僕はユアが大好きだって。 もうとっくに愛してる。ユアを失うなんて考えた事も無いし、ずっと側にいてくれるって、僕が願えばユアはそうしてくれるって。 僕はきっとズルい人間なんだね。お兄様もユアも手放せなくて。二人とも手に入れたいって。 … 昨日お兄様が僕と結婚したいって言ったんだ。」 ユアはハッと顔を上げて僕を見た。 「…正直、結婚のことは考えたことがなくて、まだまだ先の事だと思ってたんだ。 アーサー達にも僕に婚約の話が沢山来てるはずだって言われたけれど、お父様に言われた事もなかったしね。 その時はびっくりしただけだった。 でも夜ベッドでひとり、その事を考えてたらじわじわ嬉しいというか、そうなって当然という気持ちになってた。 だって、結婚したらもう離れなくていいでしょ? だったら、僕はユアとも結婚する。僕はユアとも離れるつもりないから。 どちらかひとりを選ばない僕を自分でも勝手だと思うけど…そんな僕でも許せる? ユアも僕と結婚してくれる?」 ユアのスモーキーグレーの綺麗な瞳からポタポタと涙が流れていくのを見て、相変わらず僕のワンコは可愛くて、ユアの気の済むまで口づけてあげたいと思った。 僕が唇でユアの額や、瞼、頬、こめかみを順番に優しく触れていくと、ユアはうっとりと息をついて目を閉じた。 そしてゆっくりと目を開けると、輝くような笑みを浮かべて言ったんだ。 「俺、ユアール タクシームはリオネルン スペードの結婚の申し出を受けるよ。」

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