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第82話 アーサーsideリオンの引き起こした衝撃

学院、高等院合わせてもこんなにセンセーショナルな衝撃を与えた事はあっただろうか。 リオンの婚約の話はリオン自身の注目度と、その内容で学校だけのみならず貴族中で衝撃的だったのは間違いなかった。 俺とキースがリオンに話を聞いたのは、リオンの兄君が帰国してまだ1週間も経たない頃だったように思う。 その前日にリオンもユアも高等院を留守にしてたが、夕方戻ってきたリオンに俺たちは呼び出された。 滅多に入らない自室に呼び出された時点で、俺たちは何か大事な件であるのは察してたのだけれど。 「ごめんね、急に呼び出して。でも二人には話が広まる前にちゃんと話しておきたかったから。 …僕ね、婚約したんだ。」 俺とキースは顔を見合わせた。リオンの兄君の帰国、ユアの動揺、最近のあれこれを思い出したからだ。 「僕はつくづく自分が身勝手な人間だと思ってるんだけど、でもこうする以外の道が思いつかないし、むしろ自然だと感じるからしょうがないんだ。 僕が婚約したのは、リュードお兄様。そしてユアだよ。」 俺たちは時間が止まっていたに違いない。 よく考えたら十分にあり得る話だったのに。 いや、むしろなぜ考えなかったのかと、自分たちの馬鹿さ加減に呆れるほどの衝撃を受けたのは間違いなかった。 俺とキースは息をゆっくり吐き出してた。キースがリオンにアイツにしては珍しく優しい笑顔で言った。 「おめでとう、リオン。ちょっと思いつかなかったけれど、俺たちの大事な幼馴染のリオンもユアも幸せになれる良い婚約だと思うよ。俺たちも嬉しく思う。」 俺も頷きながら、幸せそうに微笑むリオンに聞いた。 「俺は兄君が結婚したいと言ったって話をリオンから聞いて、婚約もそう遠くないと思ってた。 でもリオンがユアとどうするかってのは本当に分からなかったんだ。 二人は昔からいつもべったりしてたし、まぁ特にユアのリオンへの執着は凄まじいものがあったからな。 でもリオンには兄君がいただろ。正直ユアの強敵だったのは間違いなかったし。」 リオンは俺たちに悪戯っぽくも艶めかしい流し目を送ると明るい声で言った。 「僕にもどうしたら良いかなんて分からなかったよ。 でもお兄様の居ないこの三年間で僕はユアを愛するようになったし、ユアを失うなんて考えられなかった。 だから誰がどう思おうと、二人と結婚するのが僕の正解で、僕の我儘なんだ。 お兄様とユアが実際どう感じてるのかは僕にも分からないけれど、二人がこの形を選んでくれて僕は本当に幸せだよ。」 そう言う俺たちの大事な幼馴染はとても幸せそうに笑った。

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