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第106話 実習が始まるよ

「ふぅ、疲れた…。」 キースはこちらをチラッと見ると言い聞かせるように言った。 「いいか、リオン。今日はユアは騎士実習なんだから、リオンが疲れたとしても抱えてくれはしないんだからな。」 「そんなの分かってるよ!一体キースは僕のこと何だと思ってるの?オトコだよ?もうっ!」 キースはニヤリと笑ったが、直ぐに真顔になって声を顰めた。 「…それから、さっきも言ったけど言動にはくれぐれも注意するんだぞ。 ロナルド先輩に目をつけられて、賢者だなんて話になったら王宮に閉じ込められるかもしれないからな。」 馬車を降りてから、キースは深刻な顔で僕に再三注意を与えた。 何でも僕がポロっと話す事がロナルド先輩の言う先見の賢者っぽいんだって。 確かに自分の中で普通だと思っている事が、必ずしもそうじゃないという状況は子供の頃からあった。 でも、それがそんな先見の賢者とかいう話に繋がるなんて大袈裟だなと思ったんだけど。 キースのあの真剣な顔から考えると、真偽の程はともかく目立たないように気をつけようと思った。 キースが煩いしね。ハハ。 僕はそれより、いかにしてユアの騎士的行動を見る事が出来るかと考えていた。 実習もたのしみだけど、ユアのカッコいい姿もせっかくなら見たいじゃない? 僕がひとりクスクス笑っていると、キースが隣で大きなため息を吐いたけれど何だろ? あんな事言ってたけど、キースも疲れちゃったのかな? 目の前に切り立った大きな岩肌が見える。 おお、これがそうか!確かに斜めに走っている断層が露出していて、地下鉱物が採れそうだな。 僕はこの近くに水源が無いかとキョロキョロした。 もし川がそばにあったら、隆起した地質が削られて場合によっては宝石のような鉱物が採れるかもしれないと思ったからだ。 確か緑ヒスイとかは川で採れたはずだ。ん?ヒスイって何だっけ? ああ、もしかしてこれをポロリすると、キースの言うヤバい事になっちゃうのかな? 何だか気にしてたら何も喋れなくなっちゃいそうだ…。うーむ、これは中々面倒だなぁ。 そう思いつつも僕は水源を探してキョロキョロしていた。 宝探し大好きなんだよねー。ていうか嫌いな人いないんじゃないの? 僕はフラフラと皆の所から無意識に離れて行ったようで、険しい顔のキースがやって来た。 僕はキースに手を引かれて、皆の集まっている場所へ連れて行かれた。子供じゃないんだけど…。 「全く呼んだって来ないんだから。集団行動ちゃんとして。」 わー、誰かに似てると思ったら、キースってばセブみたい。ふふ。 「俺、何だかこの実習無事に終わらない気がしてきた…。」 キースはぼくをジト目で見つめると、両手で顔を覆った。 あら?キースってば、お疲れさんだね?

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