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第64話「刺激が強い」

「こ、こっ、こんなものを、ッ!?」 「いやそれは」 ギシ、と後ろでマットレスに手をついて、芽依はその箱の中身に驚いて仰け反った。 足は正座したままなので、太ももの筋肉を伸ばしているようなポーズだ。 (こんなに太くてエグいの挿れたの、!?) 甘くみていた。 慎重派で少し怖がりでもある鷹夜のことだ。きっと小さめのプラグとかローターくらいのものだろう、とたかを括っていた彼は自分のものよりは少し小さいだろうか?いや、そんなこともないような?と言う程にしっかりと太さのあるL字型のバイブを見つけて心臓がバクバク言っていた。 こんなものを、愛しい鷹夜のあそこは、自分のそれよりも早く咥え込んで絶頂したと言うのか、と驚愕して。 (え、え?そんな、鷹夜くん、俺、鷹夜くんのこと満足させられる?こんな太いやつ咥えたの?え、俺のは痛いのにこれはいけるの?しかも普通にイッたの?それはつまり、えっと、俺のテクニック不足とかですか??) 真っ白な天井を見上げているのに、目の前が真っ暗になりそうだった。 あんなにゆっくり解しても入らなかったと言うのに、自分で解してひとりでスるならこの太さもすんなり入ったと言うのか。 先程まで久しぶりに触れる鷹夜の熱に勃起して苦しくなっていた下着の中のそれはいつの間にか少し小さくなっている。 自信が、一気に消えていっている。 「芽依、あの、それはまだ、、」 「えっ!?」 仰け反っていた体勢から腹筋を使ってガバッと元の鷹夜と向かい合った位置に戻ると一瞬頭がぐらついた。 勢いが良すぎて血が追いついていなかったようだ。 再び向き合うと鷹夜は申し訳なさそうに眉尻を下げてへにゃっと笑い、シーツの上の箱の中から、1番左にあったアナルプラグを持ち上げる。 「これだけですね」 それはまさに芽依が、「鷹夜くんなら多分このくらいの大きさのやつなら挿れてる」と言う想像にぴったりな大きさのプラグで、いかにも初心者向けと言う風貌をしていた。 「済んでる、と言うか。ええと、尻に?、うん」 「あ、そ、そうなの?」 芽依は明らかにホッとした安堵の表情を浮かべている。 「他のは怖かったし、その、芽依と一緒にいるときに使おうと思ってたし、もともと」 「た、鷹夜くんっ」 鷹夜の気遣い?もとい、その慎重さに改めてトキメキながら、何でも自分と一緒にしたいと思ってくれている健気さに胸を打たれ、芽依はきゅるんっと目を輝かせた。 「ありがとッ!あの、えっと、何だろ?え、お待たせしました?」 「あ、はい。ふはっ、そうな!ちょっと待ったな」 色々あったから、と笑い合い、再びそれぞれが全てのオモチャを見渡してから視線を絡め、小首を傾げながら困った顔をしあった。 「ふふ、どうする?少しずつなら、まだそのプラグだけにする?」 芽依はヒョイとバイブ2本が入ったままの箱をベッドの下、ラグの上に下ろすと四つん這いになって鷹夜の方に身を乗り出した。 お互いの鼻先がスリ、と触れ合う。 睫毛の一本一本がはっきりと見える距離感に、たまらなく愛しい気持ちが湧いた。 「んー、どうしよ。ゆっくりがいい、かな」 「じゃあ、いけそうだったらくらいにしよ。鷹夜くんに触るの久々だから、ゆっくり楽しみたいしね」 「変態っぽ。おっさんかよ」 「鷹夜くん相手には変態ですよ」 腰に両手を回し、鷹夜の尻をズリズリと自分の方に引き寄せ、今度はゆっくりと芽依が鷹夜に覆いかぶさって、彼の体を丁寧にベッドに横たえていく。 背中にある芽依の手のひらの熱さを感じながら、鷹夜は抵抗することなくぽふん、と仰向けに寝転がった。 「好き」 「ん。俺も好きだよ、芽依」 視界がお互いで満たされる。 幸せだった。 無論、お互いに。 遠退きかけていた最も必要な存在がやっとすぐそこに戻ってきてくれた。 体だけじゃない。心の距離もだ。 ほう、と体から力が抜けていくのが鷹夜には実感できた。 恥ずかしながら、ここのところはじめての事ばかりしていたせいか、そして芽依から離れていたせいか、やはり気を張っていて体が強張っていたらしい。 息がしやすい。 より深い呼吸ができる。 「?」 それ程に、見上げた先でニコ、と笑う彼の存在は、いつの間にか鷹夜の中で大きな大きなものになっていたのだ。 依存だとか、そう言うものではなく。 当たり前、日常、そう言うかけがえのない枠の中に、小野田芽依がいるのだ。 「キスしていい?」 「ん、ちょーだい」 「か、かわっ!なに、何もう、なにっ!」 ワーワー言いながらも嬉しそうに笑って、芽依がキスを落としてくる。 何度か軽く触れ合うだけのそれを繰り返してから、だんだんと深く、呼吸を奪い合うような絡まり方になっていく。 「ん、?、んゃっ!ッう、」 「可愛い、鷹夜くん」 キスの傍ら、かりっかりっと鷹夜の乳首を引っ掻くと、それに合わせてビクンッと体が震えるのが見える。 甘ったるく熱のこもった息を吐きながら、鷹夜が快感に身を捩らせた。 「自分でしてなかったの?」 あまりの反応の良さだったので、芽依は少し驚いていた。 「あんま、り、、あっ」 鷹夜に脚を開かせて間に挟まるように彼に覆いかぶさりながら、芽依は背中を丸めて鷹夜の胸元に顔を寄せ、ぷっくりと立ち上がった乳首を舐め上げる。 器用に舌を動かしてくにくにと弄んでやると、堪らないと言った具合の嬌声が漏れた。 「ひ、んんっ」 「鷹夜くん、ここ、こんなに感じなかったのにね」 「ンアッ!」 ちゅくっと吸い上げると、大きく腰が跳ねた。 思い返すとそうだ。 芽依が言ったように、付き合いたての頃は乳首なんて全然感じなくてくすぐったい程度で、いじられると大笑いしていた。 なのに今は違う。 こんなにも、芽依の手によって変えられてしまった。 「ッ、だって、お前が、ぁんっ」 「俺が?」 カリッ カリッ 「んっンッ、芽依が、触るから、あっ」 わざとらしく刺激が強い動きばかりをされる。 デコピンよりかは威力は弱いものの、鷹夜が身体を揺するくらいには強く、人差し指でぴちぴちと乳首を弾く芽依。 長くしなやか指と、それでいて鷹夜のより大きくゴツゴツした手。 その全てが鷹夜のサラサラした肌を味わうように彼を愛撫した。 「うん、ごめんね。俺が触ったり、はじいたり、つねったり、ちゅーちゅー吸ったからだよね」 「んあ、あっ、んっ」 「やらしくされちゃったんだよね?」 「んんッ」 キュッと芽依につねられると、ビクンッと大きく身体が反応して、鷹夜は自分の履いているパンツに違和感を感じた。 (ヤバ、めっちゃ濡れてる、、) フッと視線を下げると、やはり下着の中でパンパンに勃起した性器が布を押し上げているのが見え、更には先端周りが暗く色を変えているのも見えた。 興奮して先走った体液が漏れて、パンツに染み込んでいる。 「ッあ、!」 「なあに見てるの?」 「んっ」 ズリ、と先端同士を擦られて思わず上擦った声が漏れた。 鷹夜のそれの上から芽依が自分の勃起した性器をお互いのパンツ越しに擦り付け刺激してきたのだ。 大きくて、くっきりと太さも分かる。 「鷹夜くん」 「ぁんっ、、!」 自分と、自分に乗っかっている芽依の美しい肉体との間にあるそれらが触れ合うたび、鷹夜は目を潤ませて小さく声を漏らした。

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