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第1話 俺とキミの関係
「叶、俺とキスしたくない?」
俺は下校中唐突に聞いたみた。
まだ付き合い初めて間もないけど、キスは沢山してきた。
勿論最初のうち、俺は『禁煙をするための唇の寂しさ』が理由で、叶は『中学の思い出を上書きしたい』が理由だった。
でも今は恋人同士になれなんだし、恋人としてのキスを交わしてきたはずなんだけど……、あんなに『唇が寂しい』と言って刺激を求めた来た叶が最近意識しちゃってて、照れてあまり長いキスをしてくれなくなった。
まぁそれは俺が原因でもある。
先の関係にすすみたい、ペッティングしたり、ヌキっこしたい、あわよくばセックスしたい。
叶が俺の想いに答えてくれる前に軽くペッティングしたが、それ以来叶が警戒してるのだ。
今思うと飛ばしすぎたかもとすら思うけど、俺は焦っていた。
叶がもし俺より好きな人間が出来て、そいつに盗られてしまうかもしれない。
そう思うと気が気じゃない、焦りに焦っている俺がいた。
叶の様子を見ると、プイッと俺とは反対方向を向いていた。
可愛らしい頬が林檎のように赤い。
「……何故今なんですか」
叶は嫌とは言わないんだ、と安心しつつも俺はどこでキスをしようか悩んでいた。
「叶はどこでしたい?」
「杉原先輩は馬鹿ですっ」
叶はいきなりスクバで俺の足を攻撃した。
だが叶のスクバがいくら重くても、彼の力が非力なもんで攻撃力はあまりない。
「なに言ってんの叶ちゃん。俺はいつでもそんなことばっかし考えてるからね?」
「では何故こんな時に言うのですか!!……もう少しで今日はお別れなのに」
叶は振り向いて俺を見た。
その彼の表情は、とても切なそうななんとも言えないような顔だった。
それで俺は分かった。
俺が叶とキスしたいように、叶も俺とキスしたかったんだ。
でも叶は今キスをせがむほどの経験値はないのだ。
前は『刺激をください』と言ってきて唇を重ねていたが、そのときと今『俺と叶の関係』は違うんだ。
今は『ただの刺激』じゃない、叶は『俺を恋人として意識している』から、もともと照れ屋な叶は、まだ『キスして』とは言えないんだ。
あんなに俺と唇を重ねてきた叶が照れてる。
可愛い、なんて可愛い俺の叶。
「叶。キスしたいときはせがんで良いんだよ?」
「……はぃ」
消え入りそうな声で俺の恋人は返事をしてくるもんだから、俺は手を差し出した。
すると叶は俺よりかなり華奢で小さな手を俺の手に重ねてきた。
その手を俺はぎゅっと握りしめて、公園に向かった。
ただキスをするためだけに立ち寄る公園。
日の短い秋にはうってつけな、子供向けの遊具が沢山ある公園で、俺と叶はキスをするんだ。
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