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Trac03 New Rule/デュア・リパ 後編

ジョンはふぅん、と笑うだけだった。 「やってみれば?」 孔に指を埋めて行くとちょっと顔を顰めてたけど、すぐニヤニヤと俺を眺め始めた。なんでそんな偉そうなんだよ。 「相沢くん、ヒマ?」 ジョンはぐったりとベッドに伏せている相沢を見遣る。 「余裕があったらこっち来てよ」 相沢は重たい体を引きずるように四つ這いで寄ってきた。ジョンは相沢の頭を引き寄せて、耳元で何か囁く。相沢は微かに顎を引いた後、ジョンの胸に顔をうずめて舌を這わせていた。 俺はというと中指を全部挿れたところだった。ジョンはまだ余裕の笑みだ。  もしかしてネコやったことあんのかな、バリタチって言ってたけど。 ジョンは乳首を舐める相沢の頭を抱え、悠然と寝そべりながら俺を見下ろす。ハレムの側室を侍らせる王様みたいな尊大な態度だ。まるで俺と相沢でジョンに奉仕しているみたいでムカつく。 指を増やしてみたら 「イッテ。下手くそ」 と鼻で笑いやがった。 「勃たせてみろよ」 意思悪く片方の眉と口の端を上げる。クソ腹立つ。中指と人差し指でナカを揉むようにしてジョンのイイところを探すも 「んー、飽きた」 ジョンは健気に奉仕していた相沢を避けて起き上がって、俺の指を抜く。 あっという間に押し倒されて、キスされた。 その間にジョンの手が自分のをしごく気配がして、唇が離れるとすぐゴムを着けてた。起き上がろうとすると肩を押さえつけられて、ジョンが相沢を呼ぶ。 相沢は俺にのしかかりながら、舌先で乳首を弄ぶ。それに視界を遮られているうちに、ジョンが入ってきた。慣らされていたからすぐ奥まで埋まった。 ジョンの形が馴染む前に抽送が始まる。ジョンに揺さぶられながら相沢にも乳首を攻められて、声が漏れそうになった。 腕を口に押し当てるも 「ダメ。それ禁止」 ジョンが退かしてくる。 「気持ちいいんだ?」 言葉でも嬲ってきやがる。歯を食いしばって顔を背けた。追い討ちをかけるように相沢の手がペニスにも伸ばされた。三点責めとか初めてで、どこがどう気持ちいいのかもうグチャグチャに混ざって分からなくなって、声を抑えてても喉の奥から声にならない音が出た。 それから勝手に身体が反り返って、ビクビクと痙攣した後、倦怠感が全身を包んで急に頭の働きが鈍くなる。腹を覆う温い液体が温度をなくしていってひやっとした。 あれ、もしかしてイッた? 「アハッすっげえエロい顔見ちゃった」 ジョンの声と腰の動きに興奮が乗る。 腹の奥に怠さが溜まっていく。イッた後に待つのは正直キツい。 「やっぱりイイよ、お前」 クッソエロい声で耳元で囁かれて、不覚にもゾクリとした。ジョンが両腕で俺を縛り上げる。 ジョンの下半身が震えて、腹の下が熱くなった。  セックスが終わった後、相沢は晴れ晴れとした顔をしていた。 「ホント最悪でしょ?俺の彼氏。 まあ浮気してる俺が言うのもなんですけど。 性格はクソなのにセックスと口ばっかり上手くて。それで中々別れられなかったんですけど、吹っ切れましたよ。 翔一さんのがイケメンですし!」 こっちが聞いてもいないのに、シャワーを浴びた後ペラペラ喋ってきやがった。黙っているときは楚々とした印象だったけど、口を開けばクソビッチじゃねえか。 「あ、ハジメさんもアプリやってるんですよね。アカ教えてもらっていいですか」 「いいけど・・・相手するかは気分次第だから」 「へえー!じゃあモテるんですね!すごいなあ」 「おーい、部屋代精算するからこっち来て」 なんかさっきまでドロドロのセックスをしていたとは思えないくらい和気藹々とした雰囲気だった。 帰りはジョンの車に乗り込んで、最寄駅まで路線が入っているデカい駅に向かった。 「ハジメさんって彼氏いますか?」 「いない」 「翔一さんとは」 「ただのセフレ」 「嫌だよ、ハジメ性格に難アリだから」 俺とジョンの台詞が重なった。お前に性格がどうとか言われたくない。 「そうなんですか?モテるのに」 「本命がいたりする?」 ジョンが冗談まじりに聞いてきた。不意打ちだったから黙っちまった。 「アハっマジで?」 「え、どんな人なんですか」 見た目とか性格とかコイツらに話すのは癪だった。ユウジのことは俺だけが知っていればいい。黙ったままでいると 「もしかしてノンケ?」 とジョンが聞いてきた。図星を突かれて、もう何も答えられなかった。 「あー、それは・・・」 「アッハッハ!マジかよお前?!」 相沢は苦笑いしながら誤魔化し、ジョンは爆笑していた。 「かわいいとこあるじゃん。他のヤツとセックスしまくってるくせに片思いとか。あ、もしかして本命には手ぇ出せないタイプ?」 「その人の代わりかも知れませんねえ」 相沢が呟いた。   「俺、前にも他の人とセックスした事あるんですけど、気が済まなくて。満たされないっていうか。やっぱり彼氏じゃないとダメで」 相沢は途中で間をおきながら話す。しっくりくる言葉を探しているようだった。要は、ユウジとセックスできないから他のヤツとセックスしてるってことか。けど、 「・・・それ、考えたこともなかった」 「やっぱり人それぞれですよね、すみません、勝手な事言っちゃって」 「ノンケはダメだって」 ジョンがハンドルをゆっくり切る。黒いフィールダーは滑らかにロータリーに吸い込まれていった。 相沢はジョンと俺に礼を言って車を降りて行った。あれ、相沢にはキスしないんだ。そういえばセックスの時もしてなかったっけ。 俺も降りようとしたら 「ハジメ、ノンケが相手なら腹括っとけよ?」 ジョンは珍しく真剣な顔付きで言った。 「さっさと告れってか?」 アリサにも似たような事を言われた気がする。 「ちげぇよ、言うにしても言わねえにしてもだよ」 「ん」 良くわからなかったけど、とりあえず返事しといた。 「ま、セックスならいつでもしてやるよ」 ジョンは顔を寄せて唇を重ねてきた。いつも通りだ。なんで相沢にはしなかったんだろ。 車から降りて、イヤホンを耳に突っ込んだ。音楽が思考を侵食していく。深く考えるのはそこでやめた。 ジョンが言っていた事の意味を知ったのは、もう少し後の事だった。

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