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俺の名前はシンデレラ。 本名は違うが、運悪く記憶喪失になってしまった為全く覚えていない。 「おいシンデレラ」 呼ばれ振り向くと 「腹減った。なんか作れ」 偉そうに踏ん反り返っている人物が目に入る。 名前は孝治(こうじ)。 背が高くてムカつく位美形の男。 で、俺の義理の兄。 多分血の繋がりはない。 「俺カレーな?」 「俺はハヤシ」 「なら俺はビーフシチュー」 はぁ??? 何言ってんだお前ら。 全部似たようなヤツじゃないか。 誰か妥協してどれか1つにしてくれよ。 「で、俺は何を作ればいいわけ?」 呆れつつ尋ねると 「カレー「ビーフシチュー「ハヤシライスに決まってんだろ?」」」 同時に叫ばれ 「最悪」 溜め息を零した。 今目の前に居るのは、先程紹介した孝治と英治(えいじ)と快治(かいじ)。 孝治と英治は義理の兄で、快治は義理の父。 遺伝なのか、皆異常な位顔立ちが整っている。 なのに全員独り身なのは、多分性格のせいだろう。 「1時間待ってやるから今すぐ作れよ?」 冷たく言い放ちながら自室に戻る義理の父・快治。 「俺寝てるから出来たら起こして?」 ふわぁ~欠伸をしながら立ち去る義理の兄・英治。 「俺今スッゲェ空腹なんだよな。秒速で作りやがれ」 長男だからか偉そうにしている孝治。 トスン、ソファーに座りながら睨まれた。 ふぅ~。 カルシウム足りてないのかな俺。 ちょっとムカつく。 皆美形のくせにスッゲェ性格悪い。 自己中で我儘で横暴。 いつも見下した様な視線を送られ、無理難題を叩き付けられる。 あ~あぁ、なんで俺こうなったんだろう? 事の始まりは2週間前。 きちんと覚えていないから聞かされた話なのだが、どうやら俺は孝治と階段から落ちたらしい。 足を滑らせた俺の巻き添えになって共に落下した孝治。 大した高さでなかった為軽い打撲で済んだが、俺は頭を強打して記憶を失った。 身元を証明する物も記憶も無かった為、俺は孝治の家に居候する事になった。 [働かざる者食うべからず] 退院し、孝治の家に足を踏み入れるなり言われたセリフ。 「は?」 見上げると 「今日からお前我が家の下僕な?」 偉そうに見下ろされた。 背が低い為見上げてしまう顔。 物凄い威圧感を感じた。 で、今に至る。 因みに名前は [召使だからシンデレラで良くね?] 英治に命名された。 [顔も女みてぇだしな] 余計なお世話だこの野郎。 「おい、手の動き遅いぞ。キビキビ動かせよ。俺を餓死させたいのか?お前は」 最悪な出逢いのシーンを思い出していると聞こえた声。 いちいち刺々しいんだよ。 いっそ餓死しちまえ、とか思いながらも 「分かったよ。急いで作るから待ってて?」 強気に出れないのは、居候させて貰っているから。 クソォ~。いつかバイトしてお金貯めてこんな家出てってやるっ。 玉葱を切りながら涙目になった。 「「「「いただきます」」」」 声の大きさ等は違うが同時に言い、食べ始める夕食。 結局カレー・ハヤシ・ビーフシチュー、全てを作った俺。 1時間以内に作れるなんてさ、神業じゃね? なのに誰1人感謝してない。 皆して当然って顔してマジムカつく。 あ~あぁ、どうせなら違う人生送りたいなぁ。 翌朝新聞を取りに玄関に向かうと入っていた回覧板。 回覧板を回すのは俺の役割。 取り敢えず新聞と共に義理の父・快治に渡した。 ソファーに寛ぎながら回覧板を開く快治。 「舞踏会?」 ポツリ呟いた。 「へぇ~楽しそうじゃね?」 「参加自由だって。折角だから皆で行こうよ」 盛り上がる3人。 [ぶとうかい] ソレってなんだ? 葡萄を食べる会? なワケないよな? 皆が盛り上がるって事は武道会みたいなヤツか? 強い奴同士が闘ったりするヤツ? って、うっわ、ソレマジ面白そう。 「主催者は本城奏(ほんじょう かなで)か」 って、誰だ?ソイツ。 「へぇ~漸く王子もその気になったか」 王子? ソイツ王子なのか? 主催者って事はソイツが一番強いって事? なら話は早い。 ソイツに逢ってソイツを倒せば俺優勝? 優勝したら賞金貰えるよな? そしたら自立出来るんじゃね? この家出る資金出来るじゃん。 よしっ、その[ぶとうかい]とかいうヤツ行ってやろうじゃん。 「いつあんの?」 身を乗りだし尋ねると 「1週間後。けどお前は留守番だから」 日付は教えて貰えたが、留守番を押し付けられた。 くぅ~、狡いぞ皆。 俺だけ除け者にしやがって。 あっ、でも皆その日外出するんだよな。 なら鍵掛けて外出してもバレなくね? 変装とかすれば顔見えないしさ。 よし、そうしよう。 そうと決まれば早速今日からトレーニングだ。 [ぶとうかい]の為鍛えるぞ。

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