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4.
漸く雪をシンデレラと呼ぶのに違和感をなくし始めた頃だった。
「はぁ!?舞踏会?」
本城の豪邸で舞踏会が開催される事が分かった。
本城奏、周囲からお城と呼ばれる大豪邸に住んでいる王子様。
見目麗しい姿をしているらしいが、雪と比べたら月とスッポン、いや、女神と原始人と言っても過言じゃない。
だが、本城が雪を好きにならないとは言い切れない。
今回の舞踏会は本城が婚約者を決める為に開催される。
そんな所に雪を連れて行ったら恰好の餌食だ。
絶対雪は気に入られ求愛される。
以前の雪は大丈夫だが、シンデレラは意地汚い。
物凄く食い意地が強いのだ。
目の前に食べ物があると、どんなに大量にあっても食べ尽くしてしまう。
で、腹痛に苦しむ事多々あり。
尚且つ記憶喪失のせいで常識抜けてるし、有り得ない行動ばかりする。
頼む、雪の顔で阿呆な行動は慎んでくれ。
頭痛がするから。
舞踏会に連れて行くとどうなるか、目に見えて分かっている。
英治達もソレは同じだったらしく
「お前は留守番だ」
シンデレラに冷たく言い放った。
これで雪は舞踏会に来ない。
安心して俺は舞踏会へ足を向けた。
今回俺が舞踏会に行くのは、親父の再婚相手を探す為だ。
シンデレラを狙っているのは俺だけじゃない。
親父と英治もだ。
だから今日はライバルを1人でも減らす為に此処に来たのだ。
だが
『ケバいな』
完全期待外れ。
全くメイクをしていないにも関わらず、最強に綺麗で可愛い雪を毎日見ているせいか
『ファンデ塗りたくり過ぎ。マスカラ付け過ぎ』
全ての女がけばけばしく見えた。
何故雪は俺を思い出さないのだろうか。
あんなにキスしたのに、あんなに好きだって言ってくれたのに、何故?
本気で愛していたのは俺だけだったのか?
俺はそんなに簡単に忘れてしまう存在だったのか?
本当に何1つ覚えてないのか?
なぁ、思い出せよ。
もう一度[孝治さん]って呼べよ。
[待たせてごめんなさい孝治さん。ただいま]って言えよ。
そしたら[おかえり]って、沢山キスしてやるから。
なぁ、雪。早くお前に逢いたいんだ。
お前にもう一度、逢いたい。
行き場のない葛藤。
誰にも言えない苦しみ。
どうしようもない苛つきが、俺を醜くする。
無意識にしてしまう冷たい態度。
完全に八つ当たりだ。
だが、雪が悪いんだ。
雪が忘れるから、だから。
こうして、俺は今日もシンデレラに傲慢無礼な態度を向ける。
『ああ、苛つく』
グラスに注がれたワイン。
流石本城。スッゲェ良質な赤ワインだ。
マジで美味い。
グラスを傾け、口に含んだ瞬間
『はぁ!?』
視界に入った美少女。
なんで居るんだよ?雪。
それになんて格好してるんだ。
留守番をしている筈の雪。
なのにソコに居たのは、綺麗に化粧と女装をした雪で
『スッゲェ可愛い』
思わずグラスを落としそうになった。
やっぱ可愛いな。
マジ抱きてぇ。
じゃねぇ。
なんで来てんだよ馬鹿っ。
本城に目を付けられたらどうすんだよ?
って、嗚呼、もぉ
「君、名前は?」
心配した矢先に声掛けられたし、マジ最悪。
これは絶対気に入られたな。
あ~あぁ、手なんか握っちゃってさぁ。離せよ本城。
って、はぁあああ!?
ドスンッ、投げられた本城。
何やってんだ?雪。
慌てて駆け寄ると
「えっ!?格闘技」
スッゲェ有り得ないセリフが耳に入り
『馬鹿だコイツ』
激しい頭痛に襲われた。
とにかく逃げるか。
勘違いとはいえ、舞踏会の主役を投げ飛ばした雪。
何故か本城は喜んでいるが、長居は宜しくないだろう。
「帰るぞ」
慌てて帰宅した。
「あっ、靴忘れた」
なんか雪が呟いたが、無視した。
あ~あぁ、今思えばこの時靴を拾っておけば良かったんだ。
何故そうしなかったか、それは『たかが靴1足』と思ったから。
靴位俺が買ってやるよ、そう考えたのが全ての失敗。
舞踏会の直後、本城が家に来てしまった。
って、なんで家知ってんだよ?
「忘れ物を届けに参りました」
って、だから何故その靴がシンデレラのって分かるんだ。
「どうやって住所知ったんだ?」
「靴に名前と電話番号が書いてありましたから」
って、お前かよ。
どんだけ馬鹿なんだシンデレラ。
お前本当に雪と同一人物か?
雪はそんなに馬鹿じゃなかったぞ。
寧ろ頭良かった気がする。
で、結局城に行く羽目になったシンデレラ。
ムカついたから家族全員で着いて行く事にした。
「なんで着いて来んだよ?」
嫌そうに聞かれたから
「お前は俺のだって言っただろ?」
即答すると
「なんだよソレ」
大きな溜め息を吐かれた。
なぁシンデレラ。
俺はお前を一生手放す気なんてねぇんだよ。
雪もお前も纏めて愛してる。
だから俺が本城の家に着いて行くのは牽制も兼ねてだ。
覚悟しろ雪。
絶対、もう一度俺に惚れさせてやるからな。
強い野望を胸にキュッ、雪の手を握った。
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