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1.
「ーーーーーーーーー」
聞こえない声。
見えない顔。
唯分かるのは
「……んっ」
撫でられる感触と
「……好き…」
舌先だけでなく、全身迄もを痺れさす
「大好き」
甘いキス。
時折見る不思議な夢。
夢の中の俺は
「離さないで？」
誰かに愛され
「ずっと側に居て？」
物凄くその人の事を愛している。
聞こえるのは俺の声だけで、相手の声は全く耳に入らない。
見えない顔、聞こえない声。
なのに、凄く愛されているっていうのだけは分かる。
だって触れる手が、感触が、物凄く優しくて愛しいから。
なのに何故？
どうして名前の所だけ聞こえないのだろう。
聞きたいのに、知りたいのに、何故？
夢の俺は多分、記憶を失う前の俺。
俺は一体誰を愛していたんだ？
誰に愛されていた？
なぁ、夢の中の人は俺の何？
逢いたいよ。
逢って顔が見たい。
声が聞きたい。
そしてもう一度、夢に迄見てしまう位愛した人を……愛してみたい。
「良い香りだな」
一体何がどうなっているのだろうか。
「きちんと全身清めたか？」
なんで俺孝治と居るんだ？
なんでお風呂上がりで『さぁ寝るか』なタイミングで孝治が俺の部屋に居るんだ。
「なぁ、俺今から寝るんだからさ、出てってくんない？」
鱈腹美味い物を食べて、温泉並に広くて豪華なお風呂にも入った俺。
心地好い睡魔に襲われていたのに
「何言ってんだ？」
何故居るんだよ。
スッゲェ邪魔なんですけど？
「何って、眠たいからさ。1人にして？」
ふぁ～あ。あっ、欠伸出た。
「駄目だ」
え～？寝かせてよ、スッゲェ眠いしさ。
話あるんなら明日にしよ？
「今日は初夜だろ？」
[初夜]って、何？
コテン傾げた首。
「そっか、初夜知らねぇのか」
コクン。
「初夜とはな、新婚の夫婦が初めてSE〇する夜の事だ」
へぇ～。
って、あれ？
新婚・夫婦・S〇X？
「で、誰と誰がすんの？」
「俺とお前」
「……………………は！？」
なんか幻聴が。
俺耳鼻科行ったが良くね？
｢えっ、ちょっ、何？｣
突然抱き上げられた身体。
そのままふわりベットの上に降ろされた。
ギシリ小さく鳴るベット。
仰向けに寝かせられた俺。
何故か上には孝治が居る。
えっと、何故俺孝治に押し倒されてんだ？
「安心しろ。優しくしてやるから」
はい！？
って、ちょっと待て。
待ってくれってばぁ。
告げるなり重ねられた唇。
「ゃっ」
小さく拒絶したのに
「ん……ふ。ぅゃ、っ」
孝治はキスを深くした。
「んん、ゃ、は…ん、ふ」
俺、流されやすいのかな？
全然力入んない。
舌を絡められる度漏れる甘ったるい声。
抵抗しない俺を見て気を良くしたのだろう。
孝治は何度もキスを重ねた。
ドンドン抜ける力。
微かに唇が離れた時には
「可愛過ぎ」
完全に脱力していた。
「綺麗な肌だな」
触られる頬。
「此処もピンクでスッゲェ可愛い」
って、ちょっと、いつの間にぃ！？
先程迄着ていたパジャマ。
いつの間にか全て脱がされ、全裸になっていた。
なんていう早技。
じゃなくて、全く気付かなかったなんて、俺それだけ孝治のキスに夢中だったって事？
マジ最悪。
恥ずかし過ぎだ。
「顔赤いな。意識してくれてるって事？」
「んなっ！？恥ずいからジロジロ見んなバカ」
「ダ～メ、見せて？恥ずかしがる顔も、感じる顔も、全部見せてよ？可愛いから」
えっ、孝治？
初めて見る物凄く優しい顔。
口調も全然違う。
いつもの刺々しさが微塵も感じられない。
触れられる手が指が、まるで壊れ物に扱う様に動く。
「出来るだけ優しくするから。力抜いて全部俺に委ねて？」
これは誰？
なんでこんなに優しくしてくれるんだ？
今迄こんなに優しく微笑まれた事ない。
こんなに甘くて優しい声、聞いた事ない。
「好きだよ」
「…………………っ！？」
なんで？
なんで優しくするんだよ？
「スッゲェ好き」
なんで[好き]だなんて言うんだ？
「嘘吐きは嫌いだ」
お前は俺の事嫌いなんだろ？
いつも意地悪ばかりするじゃないか。
冷たいし我が儘だし命令ばっかじゃんか。
こんなのからかってるだけなんだろ？
気紛れに優しくなんかすんなよ。
優しくされたら次冷たくされた時辛いだろ？
だから[好き]だなんて、言うな。
優しくなんか、すんなよ。
惨めになるじゃないか。
哀しさでか何だかよく分からないが、潤んでしまった瞳。
孝治のせいで泣くなんて、悔しくて堪らない。
「泣くなよ」
そぉっ、頬に添えられた右手。
「嘘じゃないよ。本当にお前が好きだ。お前じゃなきゃ嫌な位、な？」
トクンッ、高鳴る胸。
嘘？本当なのか？
だって、今迄そんな素振りなかったじゃないか。
「誰よりも愛してるよ？」
トクントクン、聞こえるのは胸の音。
なぁ、孝治。信じて良いのか？
「ねぇ。俺のになって？」
優しく微笑まれドクンッ！！大きく鳴り響いた鼓動。
「本当に嘘…じゃないの？」
信じられないって顔で見上げると
「嗚呼、本気だ」
優しく重ねられた唇。
「一生大切にするから、お前の初めて俺にくれないか？」
本当か？
後で嘘だって突き放したりしない？
一度でも受け入れてまた前みたいな態度されたら、俺絶対立ち直れない。
信じるのが怖い。
「大切にするから、お前だけを愛するから。だから俺を信じて？」
真剣な眼差しで告げられ
「本当に？」
心が揺らいだ。
「本当だ。もし嘘だったら、嫌いになっても良いから」
孝治のセリフに嘘偽りは感じられない。
「分かった。そんなに言うなら信じるよ。その代わり、少しでも嘘吐いたら嫌いになるからな？」
「良いぜ」
「………んっ」
奪われる唇。
逃げずに受け止めた。
「逃げるなよ？」
心配そうに聞かれ、コクリ動かした首。
俺は孝治に抱かれる覚悟を決めた。
「ん、ゃっ、ぅぁ、ぁあん」
触れられる度零れる変な声。
スッゲェ恥ずかしい。
両手で口を覆うと
「ダメ。聞かせて？」
優しく耳打ちされ、手を除けられた。
そのせいで
「嫌ぁっ、ソコ…ゃぁっ」
隠せなくなった声。
部屋の中に気持ち悪い俺の声と濡れた水音と軋むベットの音が響く。
全身を舐められ触られ、余す所なく見られた。
胸元を弄られ、汚してしまった下腹部。
味わう様濡れた物を舐め取られ、羞恥で涙が零れた。
いつもの態度が信じられない位、優しく俺に触れる孝治。
微笑まれる度触れられる度、ときめいてしまう。
たとえ今迄どんな扱いを強要されていたとはいえ、物凄く美形な人間に慈しむ様愛しく触られたら誰だって骨抜きになるに違いない。
俺はもう完全に孝治の愛撫に身を委ねていた。
「好きだよ」
囁かれる度、嬉しくて堪らない。
唇が近付くと自ら欲した。
もしかしたら俺、孝治が好きなのかな？
だから冷たくされたら哀しかったのか？
分からないけど、俺今スッゲェ幸せ。
なぁ孝治。頼むからもう二度と、冷たくしないで？
この手を離さないで？
縋る様見上げたら
「愛してる」
孝治は物凄く甘い顔と声で、俺に愛を囁いた。
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