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第6話

「あんな別れ方したから、気になってて。ずっと考えてたんだよ。 ──大空だったら、どうしたかってな」 「……」 「教室の隅っこで、一人ポツンと座ってる実雨の後ろ姿を見る度に……胸が張り裂けそうに痛くてよ。 ……声、掛けてやんなきゃなって思いながらも……また実雨を傷つけんじゃねーかって。その一歩が踏み出せなくてよ」 「……」 「だから、実雨の方から話し掛けてきてくれた時……凄ぇ嬉しかったんだぜ。これでも」 そう言って、今井くんが僕に笑顔を見せてくれる。 不器用ながらも、今まで見た事のないくらい……柔らかくて。優しくて。 「もしまた、今日みてぇな事があったら、俺が庇ってやる。 助けてやるから……心配すんな」 今井くんの、大きくて温かい手。 その手が滑り下り、僕の頬を包んだ後、意地悪げに頬をきゅっと摘まむ。 「な?」 「………うん」 心が、震える。 また涙が零れそうになり、慌てて目を伏せるけど…… 「ああもう、……泣くんじゃねぇ」 少し慌てながらも呆れたトーンで、今井くんが自身の袖口を伸ばし、その涙の跡をグイと拭ってくれる。 時折吹く風のせいで、寒い筈なのに…… 大空の形見である指輪の入った左胸が、じんわりと温かくなったような気がした。 END

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