6 / 6
第6話
「あんな別れ方したから、気になってて。ずっと考えてたんだよ。
──大空だったら、どうしたかってな」
「……」
「教室の隅っこで、一人ポツンと座ってる実雨の後ろ姿を見る度に……胸が張り裂けそうに痛くてよ。
……声、掛けてやんなきゃなって思いながらも……また実雨を傷つけんじゃねーかって。その一歩が踏み出せなくてよ」
「……」
「だから、実雨の方から話し掛けてきてくれた時……凄ぇ嬉しかったんだぜ。これでも」
そう言って、今井くんが僕に笑顔を見せてくれる。
不器用ながらも、今まで見た事のないくらい……柔らかくて。優しくて。
「もしまた、今日みてぇな事があったら、俺が庇ってやる。
助けてやるから……心配すんな」
今井くんの、大きくて温かい手。
その手が滑り下り、僕の頬を包んだ後、意地悪げに頬をきゅっと摘まむ。
「な?」
「………うん」
心が、震える。
また涙が零れそうになり、慌てて目を伏せるけど……
「ああもう、……泣くんじゃねぇ」
少し慌てながらも呆れたトーンで、今井くんが自身の袖口を伸ばし、その涙の跡をグイと拭ってくれる。
時折吹く風のせいで、寒い筈なのに……
大空の形見である指輪の入った左胸が、じんわりと温かくなったような気がした。
END
ともだちにシェアしよう!