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第十七章・2

「三村さんが、どうして料理教室に!?」 「お料理がもとで、恋人さんと別れちゃったらしいんです」  杏は気の毒そうに三村の身の上に起きた出来事を語ったが、真の心中は穏やかではなかった。 (これを機会に、三村さんが杏に近づく恐れがあるな) 「帰りに、お茶を御馳走になりました」 「何ッ!?」  ますます持って、放っておけない。 「杏。三村さんはいい人だが、君は私の何だ?」 「家政夫です」  違うだろう、と真は頭を抱える思いだ。 「恋人、だ。だから、三村さんとは必要以上に親しくしないでくれ」 「あ……」  真さん、もしかして。 (もしかして、妬いてくれてるのかな?)  これを嬉しい、と思ったら、僕は悪い子なんだろうか。  杏は、大丈夫です、と返した。 「真さんが僕のことを、その。恋人って思ってくれてる間は、絶対に浮気なんかしませんから」 「そこは、信頼してるよ」  杏が、浮気。  とても考えられないことだ。 (もう、やめよう。せっかくの料理が、まずくなる)  真は燗を飲み干し、口の中と頭の中を注いだ。

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