154 / 164
第二十一章・6
「まず遠田から、私がキャンドルを買います。その後、三村さんに引き継いでいただきたい」
「なるほど、考えましたね」
半グレの営業する店なら、いつまた無法者が目をつけるか解らない。
他に大会社を経営する堅気の三村なら、手も出しにくいというわけだ。
「私がオーナーになるとすれば、営業内容も少々変わりますが」
「例えば?」
「純粋な、クラブにします。性的なサービスは、スタッフにはさせません」
三村の眼差しは、真剣だ。
「詩央くんと付き合って解ったんですが、彼がお客様とはいえ他の人間と寝ている、というのは酷ですよ」
「そうですね。恋人を持つスタッフもいますから、三村さんの気持ちは解ります」
彼も変わったな、と真はうなずいていた。
ほんのこの前までは、媚薬まで使って他人の恋人を奪おうとするような男だったのに。
その三村に呼ばれて、真は我に返った。
「北條さんは、その後どうするんです? 何か事業は?」
「私ですか? 私は……」
その関係で、この後に会う人がいる、と真は笑顔だ。
「なるほど。うまく運ぶことを、願ってますよ」
「ありがとうございます」
三村と握手をし、真は席を立った。
ともだちにシェアしよう!