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第二十一章・5

「今日はお呼び立てして、申し訳ありません」 「いえ。北條さんの御用件なら、何でも承りますよ」  真は、ホテルのラウンジで三村に会っていた。  彼は、真には借りがある。  そしてそれは、どんなに償っても返せない借りなのだ。 「そういう風に、詩央くんに散々諭されましてね」 「詩央くんが?」 「実は今、彼と付き合ってます」 「本当ですか!?」  真は、驚いたふりをした。  その事実は、詩央の口から聞いている。 『僕にぶたれて、目が覚めたみたいですよ。初めてなんですって、人に叩かれたのは』  もしかして、Mッ気があるのかも、と艶然と微笑んでいた詩央だ。 (詩央くんと付き合っているのなら、もう三村さんは悪事ができないだろう)  そう考えて、真は三村に会う決意をしたのだ。 「実は、三村さんに買っていただきたい物件があります」 「キャンドル、ですね?」  お解りならば、話は早い。  真は、身を乗り出した。

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