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第二十一章・4

 間もなく、3月14日。  ホワイトデー、である。 「今度こそ、僕がんばりますから!」  当日に、杏は真のために手料理を振舞おうと笑顔だった。 「バレンタインデーは、真さんに素敵な贈り物をしてもらいましたから」  そう言う杏の薬指には、婚約指輪が光っている。 「早く、式を挙げたいな」 「真さんは、忙しいですからね」  まだ、日取りも式場も、決まっていない。  それでも杏は、いつも元気に家事一切を引き受けてくれている。 「実質、すでにパートナーなんだけどなぁ」  ちゅ、と杏にキスをして、真はスーツのジャケットを羽織った。 「行ってらっしゃい」 「行ってくるよ」  どこに行く、とはいつも言わない真だ。  しかし、杏はそんな真を心から信頼していた。 「遅くなりますか? 夕食は?」 「どんなに遅くなっても、杏の料理は食べるよ」 「ありがとうございます!」  こんな二人の生活が、続いていた。

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