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最後の章
ダリオはまた。
太筒を背後から咥え込み、双丘の間を猛スピードで打ちつけられている。
のしかかる音が茶色い木板の壁に響く。換気が良くなく漂う空気迄、湿り気帯びる部屋。
何も衣服を纏わない筋肉質のアルヌーの、臍の位置を超えて長くそそり勃っているそれは。
恐ろしく硬さと熱を持ってして、ダリオのはらからに突き込んでは、内側から強行に喰い荒らす。彼は非常に貪欲だ。
突き込む度、天井から吊るされているランプも微かに左右震動する。
「ダリオ様をそろそろ休ませてやれ。昨日からもうずっと打ちつけっ放しじゃないか」
オリオルが嘆息しながら、薄明かりのワイン庫になっている地下室の扉を開け、眩しい差し込む光と共に入ってきた。
ワイン庫は成る程湿度がそれなりに保たれて有る筈である。
入ればわかる、シェリー酒の匂いの様に、コクがあり鼻に絡みつく、淫気。
アルヌーは同じく何も衣服を纏わないダリオの長い髪を、手の隙間から流す様に掴み取ると自分の口唇に引き寄せあてる。
「すみませんダリオ様……!止められないんだ……。一旦あなたの中に入ってしまうと」
そう言って、尚、ちっとも腰の前後運動を止める気配は無い。酒樽に上半身をつかせたダリオの体は、両手首が後ろに絹の細紐によって縛られ、力無くされるがままになっている。
一夜明けても変わらず地下から漂う隠微の空気と喘ぎに、オリオルはつい止めに入る気になったのだが。
そばには、潤滑油の入った如雨露状の瓶が置かれてある。
乾きが迫るとその細い注ぎ口を直接後孔に突き刺されては、長いはらわたを進み、奥の奥まで波々と流し込まれ、ダリオは悶える。白濁と混ざりあったオイルが足を既にずぶ濡れに濡らしている。
オイルが挟まれているせいで打ち付け音も、まるで水溜りに突っ込んだ指が水を跳ねあげる音を出し、濡れた水音を絡ませている。
アルヌーは腰を送り、濡れた光沢の有る黒く美々しい#絹紡糸__ ペニーシルク__#の髪を口元にあてたまま、ダリオの丘陵ある背中に顔を擦り寄せ
「……真珠のヴェルヴェットの肌、淑やかな長い黒髪、触るだけで疼く痺れが走る────!!いくら放っても放っても、触るだけで英気を取り戻し立ち上がる。最高だ……。こんなに最高の人はこの世の何処にも存在しない……」
酔った音色を五楽線に乗せ囁き尽くす。
「まっ……たく、堪えが効かない奴」
オリオルが呆れ果て、ダリオの様子を心配げに彼に寄ると、伏せた目の彼の頬に指をあてる。
ダリオは、自分の使い魔から欲望の解消をその身に求められるのが、一旦身体を奪われ許してしまうと既に日課の状態となってしまっている。
黒魔術の秘儀を修める過程で師や兄弟子達により身に受けた男色行為は、既に遥か遠い昔の記憶となっていたのに、過去の侵入回数すら遥かに及ばない回数を、日々この使い魔達から受けている。
閉じていた後孔は短い日数で二人によって早くも性器と化し、双つを一気に受け入れても当たり前の様に飲み込む具合へと変貌した。
「こんなに素晴らしい男が、この世のいずこにおわすというのか……!」
アルヌーの言葉は自分自身の淫情に煽り風を送り、句の終わりにはますます打音の響きを強めて、ダリオの腰の揺さぶりを倍加に増した。
「こんなに!!素晴らしい!!男が!!」
アルヌーの腰が手荒に叩きつけられる度、ダリオの口から光る涎が飛び跳ねる。
「こんなに!!素晴らしい!!男が!!他に!!いるものかぁ!!」
ウェートをかけ限界まで膨れた雄を、屈曲する肢体に向かい、力強く押し込みねじ込む。
オリオルに支えられるダリオの顔。その唇が悲痛に曲がり歪んでも、アルヌーは同じ言葉を繰り返しながら、入り込んだ雄を容赦なく峻烈に動かしている。
「こんなに素晴らしい男が!!」
「……ぅ!……ぅっ!……ぅぅっ────!!」
打ちつける風船の割れ音が鳴る度、ダリオは衝撃の苦悶に引き攣れ歪む。
「こんなに!!素晴らしい……男が……!!なぁ、オリオル!」
アルヌーには返事を返さず、オリオルが見詰める先。
オリオルの指に持ち上げられた顎のその上の表情は、唇から涎を零し、長いまつ毛を細かく震わし、上気した顔は、ついには耐えきれない快楽と軽微な苦悶を何時間も味合わされていた果てに辿り着く、湿潤な顔色だった。
美しい────。思わず息を飲んで、オリオルは唇から流れ出る涎に顔を近付け啜り舐めとり味わった。
震える眼差しを目で食べながら、甘い唾液を舌に絡め取り吸い付く。
そして快楽の息継ぎを肺から漏らす果肉の唇へと、舌を伸ばし口唇を滑らす。
(こころよい、溶ける…………)
オリオルは地下に何しに来たのかを忘れ、口づけ合いに入れ込み没頭してしまう。
アルヌーは、前から唇を吸われるダリオの、両胸に置かれる二つの矮星をいじり回しながら、爆竹の勢いで突いている。
しばし三人は、快感の不思議なドライエック関係を象る。
アルヌーはふいに雄を、水をまた跳ねる音を立てて、ダリオの身の内から引き抜いた。白い液体が、抜けた先端からちゃぷと漏れている。放ったらしい。
気がついてオリオルが我に還り、背後に放たれたダリオから唇を離す。
アルヌーは中心から引き抜かれて首がうなだれる力の無いダリオの体を肩に担ぎ持ち上げ、隣部屋のベッドが置かれている部屋へと運んだ。
腕から絹紐を取り外したダリオの身体を、上半身はシーツに這わせる形で腰だけ高くあげさせ、ドギーのスタイルに近くして、オイルと白精にぬかるんだ場所に標的を合わせ再度突き入れる。「ぐっ……」下に這いつくばらされた肉体が、反射運動の様に筋がひくつき、仰反る。
意識の上では敬意を払っているものの、アルヌーは後背位や主人を犬扱いして犯すこの体位を殊更気に入り、焦がれても手の届かなかった想い人への征服感に内心いつも興奮を昂らせている。
「あなたのナカはなんて男を締め上げる夜鳴きの海だ……。夜の激しい嵐の海だ……。飲み込まれて……俺の心臓が止まりそうだ……。ああ、全身がとろけてしまうぞ…………!」
「………っ!ぁああっ!!アルヌ──っっっっ!!!」
「呼んで、もっと、もっと名を……この名を呼んで……!」
うっとりとなめらかに喘ぎに答える。
「アル……ヌゥ……!アル…………ッ!」
「ファビアンと……ファビアンと呼んで……!」
「…… ファビィ…… ァ…………ッ」
「あなたの中に……雄が……入っていますよ……!雄が!雄が……!この雄が…………!」誇示に拍子を合わせながら打ち抜いている。
「…………ァ…!お……!…………ふぁびぃ………ぅ………!」
オリオルの見ている傍で、這いつくばりながら、激しい打音を下半身に受けるダリオ。
「あなたは……俺達を虜にする、魔性の貴人だ…………。月も太陽も花も北極光もあなたの美しさには敵わぬぞ…………。俺達を囚えて離さぬぞ…………」
アルヌーは背中にのしかかりダリオを離さぬよう両腕で腰をぎゅっと地に押さえ付け、より一層責める力が極まる。
ダリオの#タルタロス__最深部__#は既にアルヌーに攻め入られ、これ以上無い程我が物と喰われている。
「このまま、取り込まれ、俺はあなたの一部と化したい…………」
「アッ…………ンッ…………アッ…………ゥ…はぁ……!!」
堅牢な城門を何度も突き破られ、侵入され、奥底に我が物のしるしを注ぎ込まれてはダリオは都度絶え絶えに喘ぐ。
オリオルに恋しげに見つめられながら、ダリオは、アルヌーとほぼ同時に自身の欲望を解き放ったのだった。
それからしばしの休息のちに、
アルヌーは縄跡がつかないよう、布を下に巻き、その上から縄をダリオの両腕に縛り巻き付け、天井の鈎フックへと引っ掛けた。
「…………ッ!!」ダリオが己の状態に堪えきれず顔が横を向き背ける。
首の後ろに抱き込むアルヌーの吐息がかかっている。
両腕を頭上にあげられ、脇の下が顕れたまま、座位によって下から激しく突き上げられる。
「…………っッッ!!!…………はおっッッ!!!……ッッッッ!!!……ッッッッッ!!!」
最早喘ぎは声と化さず、喉から押し上げられる生理的な反動の息となっている。
「うう!」
愛しい人の扇情的な姿を目にし、ついにオリオルも堪えきれなくなった。
オリオルは自分の上着をバッと脱ぎ捨て、ボトムを下げると、突き上げられながら透明な露を湿らし屹立しているダリオの雄へとのしかかり、自分の谷間へとピッタリあてた。
「アルヌーに同じ。あなた程の輝光を発揚する男など二人といない……」
ググググっと抵抗強く、だがオイルで既に濡らされているダリオの雄は、オリオルの後孔へとゆっくりだが誘われ、逞しい裸身の身の内に見事深く沈められていく。
「ダリオ様!」
ダリオの後頭部の髪に自らの手を絡ませ、両腕でしっかりと彼の頭を抱きオリオルが呻く。
弾力有る筋肉を持つオリオルの精悍な活躍筋にギリギリ締め上げられ、下からはねじこまれた長い雄に狭穴をギチギチと割開かれ速動される。
既に何回も最奥迄割裂かれた臓の中を、屹立する垂直がねじ入ってきては隙間無く満たす。
「ぁ……ぅ……ぉ……!!おっぉ……」
オリオルの胸の中に抱え込まれながら、
魔精は尽きず、オリオルの体内でダリオ自身から透明な先走りは生まれ溢れる。
自分に魅了された二つの鋭利な#嘴__クチバシ__#に挟まれ、彼らの欲望のままに類稀な美の羽毛を啄み毟り取られ食い荒らされる。
前も後ろも従者に犯され、ダリオは欲望の処刑火に両方から炙られるのだった。
ーーーーそれから数100年余が過ぎて。
ーーーー鏡に瞳を留めると、自分とは全く違う自分の顔が映っているのだが、その顔を見つめるととても幸せな優しげな気持ちになる。
「沼間、もうすぐ期末試験尽くしだな~!!」
同クラスの男が前の席から話しかけてくる。
「期末試験?そんなものチョロい」
ダリオが答えると、前の生徒は少し臆して
「お!余裕だねーッ!」
と答える。
「おまえって転入してきたばっかの時と感じ違うよなぁ」
「そうか?」
「最初はもーっと、もーっと、なんか……」
「ま、安倉野に入って色々目のあたりにしたからな。主に人が死んだの」
「…………だな!人生観変わるわな!」
前の生徒は納得したみたいだ。
夕暮れの光が差し挟む教室内。選ばれた数々の男子生徒が、#いつものように__・__#お互いの肉体に絡まりあっていた。
「さあ、始めろ!お前達!パルマケイアの散種を!!」
宍戸の張り上げた一声を合図に、お互いの肉体に入り込みあう股間の蛇の持ち主達。
「俺達も……」
宍戸はダリオの魂を持つ道也の身体に近寄り、制服を脱がせ始めた。
腕の中で完全に脱がせると、口を塞ぎ、キスをしながら自らも上半身から脱ぎ出した。
相上はダリオの背中に唇をあて、腰を掴んで愛撫している。
段々ほじくるようにキスの勢いが増し、乳首をつねられる。
後ろからは相上の腕が忍び寄り、ダリオの、正確には道也のだが雄を掴んで、柔らかく揉んだ。
先からは透き通る水晶の露が漏れ、雄の軸を濡らしている。ぬるんとする軸を、相上はその手で掴み指先を操って熱を煽っている。
熱さが摩擦と共に雄の上下を滑り火花を散らす。
「…………ふっ……ん、……ん、…む」
「ダリオ様…………」
掌も使われ纏ついて雄を回転させられる。
「……む!………ぅ、む……んうん!……んうん!」
「さぁ……あなたの中に挿入れますよ…………」
宍戸の口からも離され仰向けに机に寝かせたダリオの中に、ゴリゴリと擦り押し入る相上の雄。
宝物をかき抱くように抽送を送り、快感を拡げる。
その相上の背後から、抱きつく宍戸が、相上の足を手で割って、自分の雄を相上の中に押し込めてきた。
「ぐウ……くッア………!」
相上が苦く顔をしかめる。
「ああ……クソ、ダリオ様以外の#モノ__・__#が俺の中に…………!」
忌々しげに後ろの宍戸を一瞬睨みつけるが、すぐにダリオとの接合に意識を切り替え直している。
宍戸は愉快ににやと笑うと背後から相上の乳首を弄り、尻を相上に打ち込んでいる。
「最高だぜ……オリオル……!」
宍戸は相上の耳元をペロリと舐める。
「ダリオ様ならともかく、お前に犯されるのは願い下げだ……!クッくぅ……あっ!!動くな!ダリオ様の中に出ちまうだろ、すぐに!!」
激しく擦り動かれ、相上が即刻ダリオの中に浴びせてしまった。
「コノ……ヤロウ……」
切れかかる相上だが、熱くかけられたダリオは恍惚の吐息を漏らし、目を細めて笑っている。
「オリオル、まさか、……これで終わりじゃ、ないだろうな……?」
ダリオが息を漏らしながら笑って囁くと
「とんでもございません……!オリオルは、愛しいあなたの中でなら、何度でも……!」
相上はすぐ様体勢を立て直しながら、半分勢いを無くしたそれの律動を再開しようとする。
ムクムクと自分の体の中で大きくなる危うき体感を身に受けながら、体内を抉られる。
足を掴まれ、中に入り込んだ熱集に捩り回されながら、心の内で(俺の妻に会いに行こう……)とダリオは思った。
その夜ダリオが内界の内なる世界に降り立つと、現実の外の風景と一寸違わぬ安倉野学園が相変わらず出迎える。
ただし歩く人なんかはいない。
今日はどのあたりにいるのかな?とウォーリーを探す様に探してみよう。と
ダリオは緑の繁みを歩み進んだ。
ここは理事長邸。ベッドの上で眠っている道也を見つけた。
学園の敷地にある建造物の中では最も高層のこの邸は、元々はダリオの住まいだった。
気配に道也が飛び起きるととても喜んでいる。さっきまで眠っていたとは思えないくらいに明るく元気であり話しかける勢いがあった。
反対にどこかボーッとしているダリオを、こちらに気を引きつけようと、道也は抱きついた。
「…………ん」
自分から顎を引き寄せ唇を合わせてみる。
辿々しく唇を離すと
「ダリオ……俺……今日も誰もいない、俺だけ一人……ずっとダリオを待って過ごしてたんだ……」
目を閉じて訴えかけている。
「ダリオなら……ここから出る方法……わかるんじゃないのか……」
「いいか、道也。おまえは俺の……妻なんだ……もう。男だけど……妻なんだ。たった一人の、俺の#ハーフ__片割れ__#……」
そう言いながら道也の閉じた片目の瞼を舌で舐めた。
道也は思わぬ言葉に目を瞬かせ、嬉しいながらも驚いた。
「……そんなのいつ決まったの?」
「初めて身体を重ね合わせた刻に決まった」
優しく微笑みながら告げる。
「いいか。外の世界は、お前を喰い荒らす怪物だらけでウジャウジャ溢れているからな。この中にいて、ここで俺と刻を永遠に過ごそう。道也は良からぬ欲望を持つ人間を惹きつけるわりに……弱いから……ひとたまりもない…………」
惹きつけるのはダリオも同じなのだが。
「それとも、俺と一緒では心が満たされぬと言うのか……?」
道也の頬をゆっくり撫でつけた。
「……ううん」
そう聞かれると、道也はつい否定してしまう。
自分達の腰かけていたベッドの上で、ダリオはそっと、道也を抱いた。
ーーーー道也に手出しをし、俺の傍から引き裂こうもんなら、相手が誰であろうと(それがあの従者達や彼の両親であろうと)、俺は殺してしまうだろう。
「ダリ、オ…………、奥まで全部、……きて…………うぅっっ……あ、あぁ……!」
お互いの肌色の違いがなまめくもつれあった色の#モザイク__混在__#をもたらす。
「あ……あ………………いく…………いく、よぉ…………」
緊張のほどけきった軟かなほぐされた体の片足を上げ、深く、深く、に体重をかけ沈めている。
「そんなにされたら……お、れ……イっ………ちゃう、よお…………!!」
優しくもしっかりと腰を押し当てまわすと、早速受け入れた両脚の爪先がピクピクと引き攣り出す。
「俺……もお、…だ、め、……だあ!いい……よ……ぉ……っいきたいっ……よ…………っ………」
「いいぞ…………」
前髪を撫でてやると、撫でられた拍子に更に力が抜けて、道也の身体の心髄から、耐えていた表面張力が溢れ返ったのがよく目で確認できた。
「好きだぁっっっ…………!!ダ、リオ…………い……く……ぅ…………!!つうぅぅぅぅ…………!愛してるっ…………」
道也の体の中で、恍惚の溜め息がつかれる様にして、俺の白が流れた。
道也は既に、精は放たずに、痙攣しながら果てる体に変化している。
震え何度も昇天の息を繰り返すその体。
両腕を肩に回しぎゅっと掴まえる。
決しておまえを離しはしない。
聞こえるか聞こえないか位の音量で道也の耳に応えを告げた。
愛している。
俺がもしあいつらの言う様に類稀な輝光を放っているというのなら、彼にとってのどんな太陽と月の代わりにだってなれるだろう。
この偽りの苟且(かりそめ)世界に一筋の夜這星もキラリと流れぬとも。
《完結》
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