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エピローグ

俺は…………生きていた。 「あれっ!?生きてるじゃんっ!」 目覚めたら病院で治療を受けていて、二日間は丸々、懇々と眠りっぱなしだったらしい。 あの崩れ落ちた地下から、全員無事に逃げられていて、案の定俺と機洞だけ、死んだかと思われていたらしい。 けど、気がついたら朝日が照らす地上に倒れた俺がいて、慌てて救急患者として一番近くの病院に運び込まれた次第だ。 重体だった金龍さんも目覚めて、リハビリにも大した時間をかけずに元気になった。 金龍和尚曰く「菩薩様が夢に出ておまえにはまだやることがある」と生かされたそうな。 よかった。 青森神主は相変わらずで、渉流はそういえば、社樹学園を卒業したら、多分僧侶の修行を積んで最清寺か、青森神主の元で真悳神社に就職するかの、どちらかの道を行くらしい。髪を切るのが嫌だから多分神主を目指しそうだと言っていた。 猪狩先生も毎日先生やっているし、ひもろぎは多分、いずれ社樹学園を受験するんじゃないのかな。 森野も怪我から回復していて、憑き物が取れて超元気だ。 同じく怪我から回復した前山と、毎日ラブラブバカップルやっている。 あの日の怪奇事件は社樹学園の怪談として、今でもまことしやかに語られている。 あの朝を境に、清町市を覆う不穏な空気が完全に消え去り、金龍和尚や青森神主曰く、そりゃもう全然町の気が違うそうだ。 社樹学園の下に怨霊ももう眠っていないし、吐黒山の秘められた地下の怨霊も、何も眠っていない。 完全に消えている。 町そのものが、浄化されたのだ。 長い年月、決して洗われることなかった、染みつきが、ここに来てやっと、天に上げられたのだった。 もう、呪われた清町市なんかではない。 新しい、清町市だ。 あの朝に生まれ変わった、清町市の、これからの未来が楽しみだ。 ………………機洞の行方はあの日以来、依然として知れない。 もしかしたら俺を逃すのに必死で自分は埋まって死んでしまったのか? 消息は掴めない。 ここから二人生きて出られたらずっと一緒にいようと言って、あの時機洞は頷いたのだから、それが叶ってない現状、本当に機洞はあのまんま死んでしまったのかもしれない。 でも、もしかしたら、生きているかもしれない。 どちらにしろ、もう機洞が、外法を駆使して、人に危害を加えようとすることはないだろう。 あの時、あの閉じ込められた空間の中で、確かに俺は………頭を預けて押し当てた機洞の胸の心音から、機洞の想いが俺に強く伝わって来たのだ。 俺の言葉によって、機洞の心は確かに動かされていた。 嘘のない心だった。 剥がれるような、流れるような、溶けるような、透明な氷が結晶されるような、風にそよぐような、サラサラと粉になるような、空に浮かぶような……とにかく、心が今までと違う位置に動いていた。 恐らく、生まれてから何10年もずっと、微動だに動かなかったであろう強張った彼の心が、音を立てて動き出し、歩き出したのだ。あの瞬間。 騒ぎが落ち着いてから、俺は寺や神社に通って修行に励むのにもとんとご無沙汰で、ただの一介の高校生に戻りつつある。 本当は長屋大王のパワーをコントロールするためにも、修行は継続していたほうが良いらしいのだが……このまま神力や人形や、法術や呪術や陰陽道なんて世界から足を洗って!普通の高校生がやりたいんだよねぇ~! 学校の先生になりたいなって最近はぼんやりと思い描いている。 今日も社樹学園に登校する朝。 もうすぐ校門が見えるところで、よく見知ったある顔に出くわした。 「渉流」 「定児」 …………この事件で何が一番大きく変わったかって、渉流との関係が残された最大級の後遺症だ。 俺は未だに、渉流とまともに日常会話出来ないで逃げ回っている! こんな俺でもいつかはちゃんと渉流と話出来る日が来んのかな。 かけがえのない、従兄弟の幼馴染として。 「おっと、早く教室行かないと!じゃあな!渉流!!」 「おっ、おい!」 空は太陽が燦々と輝いていた。新たなる町全体を祝福し、包み込むように。 ~陰陽術鬼!~  完

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