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第25話決戦

いつか見た、白三弥山の地下洞の中と似ていた。 オーブがそこかしこに蛍のように飛び散って光る地下の道。 自分達が進んでいるのは、まるで死後の黄泉の道のようだ。 灯りを照らして、暗がりの道を、俺達は先へ、先へと進んだ。 たまに邪魔をする水たまりを上手に避けて下がっていく。 やはり同じように巨大なだだ広い空洞が、道の先には広がっていた。 更に無数に舞うオーブ。 ご丁寧に照明も設置されてある。 天井からつらら状の岩石が垂れ下がる、鍾乳洞。遠くには、小さな祠がある。 風穴がどこかにはあるのか、奥からは風の流れを微かに感じる。 「フン、来ましたか」 奥に佇むのは機洞 連。 ビシッとスーツを着込んでいる。 両サイドには見鬼姫、飯塚稲荷。 「もう、やめろ。怨霊封印を解く、なんて」 「どうして?やめる理由なんてないですよ」 「……俺がやめさせる!」 四神の力が込められた札を構えた。 「やってみろ!!」 機洞は片手を構えた。 「#天律雷音__てんりつらいおん__#!!!」 渉流の雷の攻撃が大鼓を連打するような激しい雷鳴を鳴らし、空間を切断するように勢いよく機洞に向かって走る! ダンッ 雷の豪流を代わりに受け止め散らした者がいる。 機洞の盾になる、飯塚稲荷の姿から変幻した石狗。 そして石狗の放つ一点局所防壁だった。 「#飯綱__いづな__#打ち!!」 そのまま手に持つ石棍を、渉流に向かって振り下ろして走ってくる。 「ハッ……雷剛杵!!」 渉流は軽く笑って、掌から雷の光波を放つ。 石棍から放たれた衝撃波と雷の波が中間地点でぶつかる。 見鬼姫とひもろぎは違いに声もかけ合わずいきなり戦闘を開始した。 身軽かつ、スピーディーすぎる動きをして飛び交かってくる見鬼姫。 「#纏い袖__まといそで__#!!!」 どこまでも伸縮する白い袖は、ひもろぎの体を捉え、捉えた瞬間、見鬼姫は素早くジャンプし、ひもろぎの元へ 「うっそお!」 「熊手裂き!」 ザシュウウウウウ!! 長く伸びた五本の爪を凶器にして、振り下ろしてくる。 何とか避け距離を取っても、またすぐ伸縮自在の袖がひもろぎを捉え、飛びかかり、裂き、貫通しようとし、の繰り返しの攻撃。ひもろぎからの攻撃は袖がひもろぎを捉えたまま、アクロバティックに後ろ向きに回転しかわされる。伸縮袖をゴムやワイヤーのように操り、多彩なアクションをして回避も自由自在。 レンジを思うままにコントロールする、見鬼姫の攻撃法。 「やだもおっ!」 「キャハハッキャハハハハッキャハハハハハハハッ」 「ひもろぎ!」 猪狩は叫ぶ。 「お兄ちゃん!お兄ちゃんはこっちこないで、そこで私の補助祝詞を詠唱していて!」 ひもろぎに取っては兄に参加されたらかえって邪魔なだけだった。 ひもろぎの神力を高める補助を、兄には任せた。 「八乙女舞系・#大麻__おおぬさ__#八卦霊光舞!!」 バレリーナのように身をくねらせ、体を背後に反らせたひもろぎの体から、浄化の力が込められた大麻の葉が、何枚も一気に八方に飛び散る。 機洞と向き合い対峙するのは、青森 薔山の後ろ姿。 「随分好き放題やってくれましたよねぇ」 「フフッ、勝てるのか、俺に」 「私もそこまでの自信は無いかなぁ。 ………でも相打ちまでなら、可能!」 「ク・マダラ!!!!」 青森が言い終わるが否や、機洞の前に空中に描かれた紋様が浮かび、機洞の手のひらから現れた幾つもの触手が何かの方陣を描きながら向かっていく。 「キリーク・マダラ!!!!!」 機洞の背後からも、何本もの触手が腕のように、そして後光のように、紋様の形に動きながら沸き立つ。 青森は右手だけで作った印を顔の前にかざした。 「陰陽鬼門破邪……!!」 青白い#光子__フォトン__#によって形成された宙を浮かぶ五芒星。 紋様を#模__かたど__#り蠢く、うねうねとした触手が、突如として青森に向かっていく。 喉を突き破ろうと。 しかし浮かんだ五芒星が飛び、レーザーとして衝突した触手を焼き切る。 触手は短く千切れ跳び、シュルシュルと一旦機洞の身体までに舞い戻っていく。 「フフン」 顔色を変えずに、機洞は平然としたまま、突き刺しそこねた青森を見下ろす。 「キリーク!!」 もう一回発せられた真言。言葉そのものに威丈なる波動が炸裂している様だ。空間をビリビリくる。 千切れた触手も拾われ、無数の触手がうねうねと交わり、巨大な大木の様な太さを形成し、#大蛇__おろち__#の動きをして、青森に向かってきた! 捕まる。「ぐう……っっっ!」 「フフッ俺の龍……!」 機洞の眼が残忍に光る。 波打つオロチの触手は青森の身体を巻きつき捉え、ギュウギュウ締め付け内臓を潰そうとしてくる。 「くくく……っ!!」苦しみに耐えかねる青森の顔。いつも来ている神官服の上を、触手が何重にもなり食い込む。 しかし青森は上げた片腕を#戦慄__わなな__#かせ、胸の内側から指人形を取り出す。 「#役追儺__えんのついな__#……!!」 一つの指人形の中から赤い二体の鬼が重なりあって出てきた。 地下洞の高い天井まで後もう少しで届く巨人。燃ゆる茶色の頭髪を靡かせ、実存感に薄いのか、歩いても地面は微々とも揺れず、フワフワと幻影の様に透けて動いている。 二体の鬼は社交ダンスのホールドの様に組み合って、互いを離す事は無く、それぞれの片腕がマサカリと刀の武器を持っている。 武器の先鋭が振り上げられ触手を叩き折った! 青森がドサッと地に投げ落ちる。 喚ばれた巨大な鬼と機洞が暫し睨み合い互いを#御__ぎょ__#しあおうとする…………。 風に吹き飛ばされる凧のように不思議な移動の仕方をする鬼は、いきなりブワッと機洞に迫った。 何層にも囲まれた、声の反響する岩々。 洞窟の見通し良く広がる空間に流れる、ひんやりとした空気は重々しく、徐々に蒸した熱闘の闘気を伝導する。 ドガッ ガンッ ドゴンッ 石狗の絶え間ない猛攻撃が渉流に続く。 渉流は身を翻しながら、時にはカウンターで攻撃を仕掛けていくが、攻撃は交差しあうだけでなかなか互いに当たらない。 重い石棍が空気ごとブン殴り岩の地面に穴を開け、重力に反した渉流の飛ぶような蹴りが地下洞内の風を切る。 (俺も、今日まで密かに培ってきた、奥の手を出すしかないようだ) 「定児謹製……#織神__しきがみ__#。謹んで作りました」 うさぎの顔の形をした形代を放ると、シュウウウと煙を放ち、俺の式神は現れた。 俺はこの日のために、実は毎日せっせと一つの式神を密かに育てていた。(ごめん、本当はペット感覚の軽い気持ちで育ててた) デザインは、そこらの雑誌に書かれてあった「サン○オのシ○モンロール」を参考にしたので、まるでシナ○ンロールのパチモノのようなデザインをした、幼稚園児くらいのミニサイズの式神だ。 名付けて 「しにゃもん!ロール!!」 行け!!俺の式神!!!! しにゃもん!!! しにゃもんは現れ出でるとよちよちと拙く石狗の元に歩いて行こうとした。 が、数メートル進んだくらいで振り向き、じぃ~っとこちらを見ている。 その表情は目が潤み、心細いような頼りなげだ。 『しにゃもんは式主の手から離れたくない!』 「し、しにゃもん!向かっていけ!敵に!ほら敵だ!敵!あれ!」 慌てて指で差し示しても、呼び出した式神は全然指示に従わない。 ああだめだめ!こっちを振り返って心もとなさそうに見ないで!しにゃもんロール!巣立ちの時だよ!今こそ飛び立て!しにゃもん! じぃ~っ 『しにゃもんは独り立ちを怖がっている!』 ちょっとさあ! やはり俺の生半可な修行度合いと実力じゃ、作れる式神はこの程度になるのだろうか。 しにゃもん、お前の生まれた意味は何だ! 『しにゃもんは、飛びつくように式主の元に走り寄って抱きついた!』 「ごめん、ごめんよ、しにゃもん。お前はまだ小さいのに無理させちゃって……悪かったよ、しにゃもん……」 しにゃもんは俺の胸でワンワン泣いていた。 その時俺に向かうハサミで空気を切り裂くような裂音がした。 「雷剛杵!!」 ん? ばかーん 俺のすぐ背後で、何かと何かがぶつかって爆発し飛び散った。 「定児!何やってんだ!!!」 「クッ!!……クッ!!」 頭上高くから来る鬼の攻撃を、自身の発する触手で振り払う機洞。 同時に迫る青白い五芒星の発光。 触手が鬼を捕らえた。 「キリーク!!」 触手は急に熱波を発し、鬼を炙り焼く。 二対の鬼は途端に紙に描かれた絵みたいに平面になり、シワシワくしゃくしゃと縮れて小さくなり消えた。 だが五芒星が向かう。 もう少しで機洞の皮膚に当たる。 当たり、切り裂く、ところを。 渉流と技を繰り出しあいながら、石狗は石棍を投げた。 飛んできた石狗の石棍が守る! お陰ですんでのところ、ダメージを免れた機洞。 身代わりに砕け散る石棍。石棍に守られた一瞬のタイミングのズレの間に、局所に結界を張って自分に飛び散る#石礫__いしつぶて__#から身を防御する機洞。 機洞はフーーッと荒く息をつく。顎にかかる汗を拭う。 「アァ────────────!!」 見鬼姫の悲鳴が丁度機洞にかかる。 ひもろぎにやられたらしい。 声の出処を見やらず、フウッと静かにため息をつく。 「もうそろそろいいでしょう。吐黒山の封じられた古代の怨霊達を呼び覚ます!」 声には動揺や焦りが見られない。 遊びはこれまでだ、と 機洞が、社樹学園の時のように、封印を解こうとしている。両腕が印を組む。 「召し返しの呪歌」 全員の脳裏に思い浮かぶ。 怨霊達の#大隊__バタリアン__#が、あの時のように、再びー。 ヴオオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオ~~~~ーーーーッ 腐食に塗れた呻き……。 呪いと怨嗟の遠吠え……。 空間を濁らす強い冥界の思念……。 「悪霊がッ来たッ」 ひもろぎが叫ぶ。 おどろおどろしげな霊の顔が、幾つもいくつも、岩肌に浮かび上がり、ズラリと固着していた。 無数の顔はズズ…………とこちらに押し寄せ、岩肌を離れ浮いて来た。 黒い洪水が襲って来たかと思った。 だがそれは、無数の苦しみが浮かぶ顔に塗れた怨霊渦流! 黒い超念の濁流は洞窟内を奮い飛ぶ! 怨みの極熱がいまやっ! 渉流達全員に襲いかかるっ!! この巨大空洞に風を巻き上げっ! 「兄さん!」 パシッ ひもろぎから受け取る猪狩! 投げ渡されたのは鈍くだけ光る神鏡! 「これで皆を防る結界を作って!」 神鏡を胸に掲げその場に目を閉じ、座りこむ猪狩。 ひもろぎは何かを詠唱し続け、兄が鏡に貯めた霊気を増幅させようとしている。 七色の光波が次第に形作られていく。光のドレープを揺らし。 怨霊の黒流が作られた結界に追突してきた! 光の半透明な結界が、まるで新幹線に追突された様な衝撃を受けている!! 「キャアアあああっ」 ひもろぎが叫ぶ。 あわや、結界はホロホロと崩れそうに…… 怨霊はうねり下がって、また同じ場所を追突しようと狙う。 定児の身体が金縛りにあい、立ったまま固まっている。 その目は白く濁り、黒眼を失っている。 全員が巨大なる気を感じて定児のほうを振り向いた。 定児の背後の影が育つ! ムクムクと、煙の様に大きくなり……。 人が浮かび上がる。 位の高い、古代の#王__おおきみ__#の姿。 #頭巾__ときん__#の冠をいただき、古の礼服を来た壮麗なる#王__おおきみ__#が、定児の背後の影から、壮大なプロジェクションとなって浮かび上がる。 何Mにも及ぶ姿はとてつもなく威厳があり、目は紛れもなく怨霊王の静かなる恐ろしさを放つ。 『我の鎮守、#堰__せ__#きせし者。我、聖断す。勅なりぞ。』 怨霊の頂点におわす帝威を放ち、長屋王が両手を拡げる。ヒレの様な礼服の袖がざわめき、両腕から、可視出来るまばゆいばかりの光の放射が遥か洞窟の奥まで一気に飛び散った。 渉達をすり抜け、凶々しい怨霊の黒流を貫き、あっという間に、細かい光の粒子へと変える。 あんなに美しい、光の粒へと。 それはまるで、古代の絵巻物の様な金箔の#粉吹雪__こふぶき__#。 終わると長屋の王は両腕を前で組み、静かに影へと戻っていった。 定児ははっと我に帰るが、全てを覚えている。 信じられない。が、長屋大王はまた俺に力を貸してくれて、広大無辺なる光がレーザーのように地下をどこまでも迸り、蘇った地の怨霊達を一つ残らず一掃したのだ。 ありがとう、長屋大王! そして、最弱にして最強の主人公、柏木定児。 自分に拍手だ! 俺がいてみんなよかったね! 仲間の元に駆け寄りわあっとやりたい。 「やはり君か………」 ゆらり、と機洞が俺と皆の間に立ち塞がり、遮った。 ポケットに腕を突っ込んだまま、俺に向かって語る。 「私は君の力が得たかった。 なぜなら、君は私の陽の姿であり、俺は君の陰の姿だからだ。 私と君はよく、似ている。 それでも、私の邪魔をするというのならば仕方がない。 ……………俺は今から自分の光を殺す!!!! 定児クン!君には絶望しか残さない! オオオッ!! 外法禁術・#絶滅魂香__ぜつめつこんか__#!!!!!!! 」 俺を紫と青の光と煙と忌まわしい香りが包んだ。 「定児!!!」「定児サン!!」「定児くん!」「定児くん」 「うっ」 目を閉じた。 だが暫く経っても何もない。 目を開けると。 守ったのは、発光する、……光の魂だけの浮遊体となって現れ出でた、金龍さんだった。 「金……龍!」 流石に機洞が目を剥いてこれまでに見たことない余裕の無い顔色に変わった。 魂だけの金龍さんが唱える。 機洞渾身の絶望的な一撃は、金龍さんの黄金に輝ける魂によって、機洞自身へと跳ね返されていく。 機洞は咄嗟に両腕を交差し防御壁を張りガードに耐えるも、やはりあえなく吹き飛ばされ、背後の壁面に飛ばされて衝突した。 「行くぜ─────────ェ!!」 渉流は両腕を視えないハープを弾くように操る! 「まほろ#明・暗・顕・漠__めいあんけんばく__#──!!」 渉流の後ろから、ひもろぎが唱え光を放つ! 「まほろ月影星影!!影は光なり!!光は影そのものなり!!夜の影は朝なり!!まほろ光影───!!!」 猪狩がひもろぎが放つ光を鏡のように受け止め、増幅し倍化させ、更に大きく膨らませてひもろぎに跳ね返す! それを更に全身で受け止めるひもろぎは唱う! 青森が深く息を吸い、宙に浮かべ自分の周りに円を作った五枚の札を一瞬にして松明のように燃やす! 「四神の呼びに召喚至れり。 陽神陰神の呼びに召喚尽くせり。 陰陽術を使う鬼、その鬼を 鬼、剋する、鬼  現れいでよ」 「天律、雷音!!!!!」 その時だった。 ひもろぎと猪狩の二人が放つ「#幻神籬__まほろひぼろぎ__#」 渉流の放つ「天律雷音」 青森の放つ「陰陽鬼剋鬼」 膝をつく機洞に向かう全てが併さった複合技を受け止めたのは、……石狗だった。 一瞬何事も無いかのような石狗の姿があり、次の瞬間には爆破を起こし炸裂した。 残骸は煙を拭いて、静かにゆっくりと砂と化し、この世から消え去ろうとしている。 弱って後退し、石の壁に手をついていた見鬼姫も、呆気に取られた顔で、流石に呆然と、その光景を見ている。 「…………」 機洞は失いゆく石狗の体を見て目を瞑った。 昨日のことのように情景が蘇る。 あの日、燃え盛る教団の施設から助け出してくれたのは飯塚だった。 逃げ遅れた人間を助けようとしていたら火に包まれ、全身大火傷を負いながらも半死半生で生きていた機洞を、飯塚が全身全霊で救出し、施設外に逃がれられたこと。 魔多羅の力で嘘のように綺麗に肉体は再生したが、本当ならばあの日自分も、細胞の一片まで燃え切り、消滅していた筈だ。 眉を険しく、目をぎゅっと硬く一回閉じると、カッと見開き、眼光はいつもの妖しい魔力を帯びている。 定児達に向き直り機洞は立ち上がった。 「そろそろ、終わりだ……」 機洞は右腕を振り上げた。 「ギャクギャク・マダラ!!!!!」 機洞の背から伸ばされた赤い触手は洞窟内を全て覆い、岩肌を全て神経を張り巡らせるかのように網状に結び、全部の壁面から天井から伸ばした触手でみっしり敷き詰めていく。 光を放つ体で凶意に満ちた眼差しを向け印を結ぶ。 目が少し笑った。 「アク・マダラ」 触手が一斉に蠢き発光する。 「こいつ!地下洞を崩壊させるつもりだ」 渉流が怒る。 「一旦!逃げましょう!皆さん!」 青森が放つ。 魔多羅神の触手を全身に戻した機洞は翻り、奥に立ち去ろうという動作を見せる。自分だけの脱出経路があるというわけか。 「逃がすかぁぁぁぁああ!!」 ひもろぎの投げた執念の玉串が、機洞頭上の崩れそうな天井の岩に突き刺さった。 玉串は発光し、岩はグラグラしている。機洞目掛けて崩れ落ちる筈だ。 俺は咄嗟に体を動かして、機洞に突進した。 完全に崩れた洞穴の中で俺達二人、機洞と俺だけの空間。 地上までの出口が完全に塞がれ閉じ込められている。 みんなは上手く逃げられただろうか。 多分洞窟の外は、生命の源である光源が登りつつあり、既に完全な朝へと向かいつつあるだろう。 落盤により、体に穴がほげた血が流れる俺を、機洞がひざに抱きかかえている。 首の後ろに機洞の腕がある。 肩から胸にかけてザックリした傷は一向に血が止まりそうもない。 「…………大丈夫か」 機洞が俺を見つめて穏やかに声をかけている。さっきまで戦っていた光景を考えれば嘘みたいだ。 「多分ダメ………へへ……」 持って後一時間、血が流れ続けたら俺は死ぬだろう。多分、そんくらい。 「あんたの部下は?念で、呼べないの?SOS……」 「……さっきからやってる。俺もパワー切れのようだ、完全に。何も外に飛ばせない。何も使えない。おまえらとの戦いで使い果たした」 「もう死ぬかもしれないから機洞に最後に抱き着いていいか?」 「……ああ」 俺は機洞の首筋にギュッと両腕をかけて抱きつく。 「最後かもしれないから言うね。やっぱり俺は機洞が好きみたいだ。惚れてる系の好きみたいだ……好きじゃないって、自分にウソついた」 「ああ」 機洞が俺の二の腕に手をかけ支える。 「もし、もしここから二人が生きて出られて、二人とも助かったら……、ずっと俺のそばに一緒にいてくれよ……これから先は、ずっと二人で一緒にいよ……う」 「ああ」 「もう、人間を殺すとか、怨霊の封印とくとか、………人間への復讐とか……全部やめろよ………俺がいるから……俺と引き換えに、今までの全部、手放してくれよ……。あれだけ手に入れたがってた俺を手に入れたんだから、いいだろ、そのくらい聞いてやっても。じゃなきゃ、あんたのものにならないぞ……」 「…………ああ」 「機……洞…………」 「修聖と呼べよ……一度くらい」 天井が揺れ石がパラパラと再度落ち始める。 どうやら落盤の再開も近付いているようだ。 「…………………」 「おい。死ぬなよ……死ぬな……おい」 声出す気力もなく唇が動かせない俺を揺さぶる。 「クソッ」

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