8 / 32

北の山から戻った3人のお話…… 身体

リンデルがロッソの細い腰を両腕で支える。 身体が固定されたところで、カースがその白く細い首筋へ舌を這わせた。 「あぁっ!」 ぬるりとした舌の感触に、びくりと喉を逸らすロッソの反応が新鮮で、カースは思わず口元が弛む。 丹念に首筋を舐め上げながら、左手を前が開いたままの寝巻きに差し入れる。 既に立ち上がった小さな突起を、カースが指先でそっとなぞると、甘い刺激にロッソの腰が揺れた。 「ゃ、ぁ、ぁあぁ……っ」 内側を愛する主人に優しく擦られ、外側を主人の愛する人に繊細に責められて、ロッソはみるみる追い詰められてゆく。 「んっ、あぁっ、ふ、ぁ、ぁああぁんんっっ」 快感に涙が滲み、頬は真っ赤に染まり、唇は震え、びくびくと腰が跳ねる。 「んんっ、んんんんっ、ゃ、ぁぁ、んんんっ」 カースはロッソの小さく形の良い耳を舐めながら、その中へ低く掠れた大人の声で囁く。 「ロッソ……、なかなか色っぽい声で鳴くじゃねぇか……」 熱を孕んだその声に、ロッソの全身を、ぞくりと粟立つほどの快感が走る。 「ぁ、ゃ、……っっっ。っぁぁぁんんんんっっ!!」 ロッソの内が締め付け始めるその中を、リンデルは構うことなくかき混ぜる。 「ぁあぁぁああっっ、主人、さ、……っっ、だ、め……ですっっっあぁぁああああんんんっっ!」 切なげに眉を寄せ、喘ぐその口端から、飲み込みきれなかった雫が溢れる。 カースがそれを舐め取ると、ロッソはさらに声を上げてよがった。 「ぁっ、ああっ、あんっ、や、ぁぁぁっっ、んんんんんっっ」 カースは小さな胸の突起を口に含んで転がしながら、手をロッソのそれへと伸ばした。 それはもう何度目の吐精だったのか、そこからは、ほんの数滴とろりと零れただけだった。 ぐったりとはしていないものの、揺らされる度にふるふると力なく揺れるそれを、カースは愛しく撫でる。 あの時も、その前も、よく役に立ってくれたな。と。褒めてやるように。 「ぁっっ、う……っ、ああぁっ」 何か言おうとしたらしいロッソが、けれど何も伝えられないままに快楽の海に沈む。 ぐちゅぐちゅと水音を立てて緩やかに出し入れを繰り返していた主人が、不意に速度を上げた。 「ん、俺も……イキそう」 どくりと主人の物が硬さを増して、ロッソは快感の奔流に翻弄される。 絶え間ない嬌声に埋もれるように、よがり狂う従者の顔を、リンデルはよく見る。 大丈夫だ。圧迫しているわけでもないし、今度は頬も唇も赤く艶やかに色付いている。 リンデルが視線を投げれば、カースも視線で頷いた。 金色の青年はそれにホッとした様子で、安心して理性を手放した。 この人が見ていてくれるなら、思い切り腰を振っても大丈夫だ。 危なくなりそうな時には、きっと止めてくれる。 カースが顔を離して、指先をロッソの胸に翳す。 リンデルが激しく揺らすその動きで、カースの指はロッソに触れたり離れたりを繰り返した。 「ぁああぁんんっっあああぁんんんんんんんんんんんっぁぁぁあ!!」 止めどなく襲い来る、激しく甘く痺れるような感覚に、ロッソは止むことのない永遠の到達感に囚われていた。 目の前にはチカチカと光が散る。 もう、恥ずかしいだとかそんなことは、頭のどこにも残す余地がないほどに、心も身体も全てが快感に侵される。 自分がなんと喚いているのかも分からないまま、涙と嬌声と、全身の痙攣がひっきりなしに続いてゆく。 ずくん。とロッソの内側で主人のそれが一回り大きく膨らむ。 「イクよ……」 優しく熱を孕んだ言葉が上から降ってきて、そこから先は何も分からなくなった。 「ぁあああああああああああああっっっっっ!!」 体内に、主人の熱が叩き付けられる、火傷しそうなほど熱いそれが、どこまでも熱く熱く広がる。 「熱……ぃ……んっんんんんんんんんっっっっ」 私の身体は溶けてしまうのか、と蕩け切った頭の片隅でロッソは思った。 自分の意思とは関係なく、内側はまだ主人の物にぎゅうぎゅうと抱き付いて、止まない快感は息すらも忘れさせる。 目の前が白く染まってゆくのを、止めるすべはなかった。 縋るように見上げた主人は、白い霧の向こうで温かい笑みを浮かべていて、ロッソはただ『良かった』と思いながら目を閉じた。 カースが、力を失う身体の後頭部に手を添える。 失神時に首を痛めないようにだろう。 リンデルは、思い切り抱いていたせいでほぼ空中にあったその身体を、そっとベッドへと戻した。 まだ痙攣を続ける身体から、自身の物をゆっくり抜き取ると、リンデルはロッソの細い身体を抱き締めた。 溶けないように。崩れて無くならないように。 リンデルは、まだ、それが怖くてたまらなかった。 その様子に、カースは胸を抉られる。 「大丈夫だ……」 男はそう囁いて、手拭いで拭った手で青年の金色の髪を撫でる。 金色の青年は、小さく震えていた。 「ロッソは大丈夫だ」 カースはもう一度、よく言い聞かせるように言う。 カースとしては、早いところどろどろになった小柄な身体を拭って、向こうの布団に寝かせ直してやりたいところだったが、リンデルがこれでは奪い取るわけにもいかないだろう。 金色の青年の、解かれた髪は肩下まで下がっていて、表情は見えない。 その金髪をそっと撫でて、カースは待つ。 けれど、いつまで経ってもリンデルはその腕を離す様子がない。 カースは、苦しげに眉を寄せながらも、極力優しく声をかけた。 「ほら、そろそろロッソに服を着せてやらなきゃ、風邪をひくぞ」 「あ…………。そっか……そうだね……」 室内はあたたかかったが、汗ばんだままに意識を手放した身体は、ひやりと冷たくなっていた。 それに気付いた青年が、慌てて身体を離す。 すぐに、カースがその身体を手際良く拭う。 リンデルは、床に落ちてしまっていた従者の下衣を拾い上げると、パタパタと埃を払った。 よいしょ。とカースの拭いたロッソの足に服を通そうとしている様に、カースが苦笑する。 「こいつ、目が覚めたら恐縮するだろうな」 言われて、確かに、とリンデルも思う。 自分やカースに衣類を整えられて、寝かされたと知ったら、ロッソはきっと青い顔をするに違いない。 「そうだね」 とリンデルが笑うと、カースが不意に顔を寄せ、唇を重ねた。 まるで慰めるように、カースはリンデルの唇を舌先で優しく撫でると、ゆっくり顔を離した。 「お前の笑顔は可愛いと思うよ。……けどな、いつも笑ってなくたっていい」 カースは呟くように告げながら、リンデルの頭を胸元に包む。 「泣きたい時には、泣いてくれよ……」 まるで、カースの方が泣いているような声だと、リンデルは思う。 「俺はもう、あの日いっぱい泣いたよ。カースがずっと、慰めてくれたでしょ?」 くすぐったそうに、リンデルが答える。 「何度だって、泣いていい。俺は何度だって、お前を慰める」 耳元で響く、男の掠れるような声に、リンデルの身体が反応する。

ともだちにシェアしよう!