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第5話2人で過ごす夜 前編R15
驚くほど速い動きだった。自分も第二王子として日々馬に乗り剣の稽古はしてきた。足の速さにも体力にも自信があった。……はずなのに。
「はっ、はぁ…ちょ、ちょっと…まっ…ま、待ってくれ!」
「あと少しですよ!頑張って!」
しなやかな動きで自分の背丈ほどある草木を軽々と掻き分けながら走るアリン。猫獣人とは皆、こんな身体能力なのだろうか…?
10分ほど走るとアリンは生い茂る草むらで待つように言った。
「ここで、しばらく待っててください。あそこが家なんです。裏口開けるので合図したら来てください。」
「はぁ…はぁ…わ、わかった。アリンも気をつけて」
「ふふっ…大丈夫ですよ!それより息あがってますよ、ゆっくり息して落ち着いてくださいね!」
にっこり笑い、坂を降りていくアリン。
ーー耳がピクピク動いてる…可愛いなぁ。後ろ姿小さい…抱きしめたらどうなるんだろ。…ていうか、あれ?いくら一晩とは言え、好きな子と同じ屋根の下で過ごすんだよな?それ大丈夫なのか!?大丈夫なのか俺の理性!!いや、手は出さない!出さないけれども!!
一人悶々とそんな事を考えていると、アリンの家に火が灯り裏口からアリンがこっちこっちと手招きしている。
ーーとりあえずこの煩悩をなんとかしないとな…
そう考え足早にアリンの家へ向かった。
アリンの家は必要最低限の家具や日用品しかないが、あるもの全て大切にされ丁寧に使われているのが雰囲気から伝わってきた。
「寒いですよね。すぐ暖房をつけます!あと、お風呂も!」
アリンはそう言いながら毛布をグイッと渡したかと思うとパタパタ動き回り、適当に座っててください!と風呂を沸かしにいった。
ふと渡された毛布を嗅ぐと、アリンの匂いがした。
ムクムクと湧き上がる欲望に気付き、慌てて毛布を鼻先から離しリビングのソファに座ると目線の先に茶色の小さい写真立てが飾られているのに気付いた。
ーーこれは、アリンと…父親と母親か…?
「それ、さっきお話した僕のお父さんとお母さんです。もう5年前の写真なんですけどね。」
振り返るとお風呂を沸かし終えたアリンがタオルを抱えて立っていた。
「勝手に見てしまっていた。悪い…」
「いいえ!それよりお風呂沸きましたよ。これタオルです、左の奥がお風呂でその隣がトイレです!一応着替えも置いておきました!」
ニコニコ笑うアリンに見送られ風呂場に向かった。
「小さい…」
風呂場を見て開口一番に出たセリフがこれだった。
使用人がいないことはわかっていた。湯船も#王宮__ じっか__#より小さいこともわかっていた。…だが…
「足が伸ばせない…肩が浸からない…アリンはこれで疲れがとれるのか?」
試行錯誤し漸く落ち着けるポジションを見つけた。ふぅ…と息を吐き目を閉じると毛布と同じアリンの匂いがするのに気付いた。
ーーこの甘い花の匂いは入浴剤だったのか。アリンに近づいた時、手を握った時この匂いだったな…
すると一度は我慢した欲望がまたムクムクと湧き上がった。
ーーしまったな…。これはどうしようか。…でも、一度出しておけば今夜は間違いをおかさないで済むだろう。
暫く悩んだが心の中でアリンに謝罪し、自分の欲望を処理することに決めた。
「んっ…ん……、、はっ…はぁ…」
洗い場に立ちシャワーを流す。そそり立つ肉棒を片手で上下に扱く。瞼の裏にはアリンの姿。
「アリン……アリンッ…!」
うわ言のようにアリンの名前を何度も呟く。先端は先走りの汁で溢れくちゅくちゅと淫靡な音が鳴っている。
ーーアリン可愛い。アリン好き。大好き。
想像のアリンは可愛らしく、そしていやらしかった。
「はっ……はっ…ん…」
服を脱がしあの華奢な体を想像する。
ーーきっと体中どこもかしこも真っ白なんだろうな。声も可愛いからな、あの声で泣いたらどんなに興奮するだろうか。
『リヒテル…好き』
頭の中でアリンの声を想像した途端。
「うっ……、、」
シャワーで流れる白い液体を眺めながら、これで暫く大丈夫だろうという安心感とアリンをおかずにしてしまったという罪悪感で、風呂場を出るまで葛藤に悩まされるのであった。
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