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第26話大切な人への報告
フェアンside
「ふふふっ……いってきます、いってらっしゃい!」
「アリンも。いってらっしゃい、いってきます。」
玄関前で向かい合いお互い声を掛け合い出勤した。
こんな些細な事だけでも心が温まる。
ーー俺は幸せ者だな…。
幸せすぎて胸の奥がきゅうっと苦しくなる。こんな気持ちになるなんて初めてだった。
ーーー
朝リンダさんに会うと早速、「あんた!どうだったのよ!!」
と、食い気味で話しかけられた。ここではなんなので、と用務員の休憩室に誘うと、確かにそうだわ!!と、ニヤニヤしながら着いてきてくれた。
「とりあえず…リンダさん。おはようございます。」
「はいはい、おはよ!で、どうだったの!?」
「…OKの返事……貰えました!」
「……!!えーっ!!やったじゃない!!おめでとうっ」
リンダさんはまるで初孫の結婚を喜ぶかのように泣いて喜んでくれた。
「そっかそっか、アリンは色々あったからねぇ…。フェアン!よろしく頼んだわよ!」
「わかっています!」
そしてニカっと笑うと俺の肩に手をかけさも当然かのように俺に言った。
「じゃあ、あんたずっとここにいるのよね。」
「……それはっ…」
言葉に詰まるとリンダさんは訝しげに俺を見つめた。
「えっじゃあ、記憶が戻るか迎えが来たらアリン置いてくわけ?」
「俺はっ!…人間も獣人も関係なく暮らせるようにしたいと思っています。どこに行こうともアリンと離れるつもりはありません!」
リンダさんは、ふーん、と素っ気なく呟くと仕事の準備を始めた。
「まぁあんた達がそれでいいなら私は何も言えないけど。……それが出来たら一番よね。…期待してるよフェアン!」
そう言うと、さあ仕事だよ!と、いつもの声を張り上げ休憩室から出て行ってしまった。
ーー必ず、人間と獣人が平等に暮らせる国にする。
それが俺の願いだ。
ーーー
アリンside
コンコンコン
「レイ、いるー?」
レイの仕事は牛乳配達。お家で牛を飼ってて家族みんなで搾乳や配達をしている。レイの仕事は朝が凄く早いからお互い働き出してからは頻繁には会えなくなった。それでも月に1~2回はご飯を食べに来てくれたり様子を見に来てくれてたりした。それなのに…
ーーフェアンが家に来てからレイ来なくなっちゃったな…
ちょっと寂しい気持ちのまま仕事帰りにレイの家を訪ねた。暫くドアの前で待ってみたけど返事がなくて、出掛けてるのかもと思い帰ろとした。……と、その時玄関のドアがガチャっと開いた。
「アリン…?」
てっきり家にいないのかと思ってたけど、レイは普通に家にいてなんならさっきまで寝ていたのか部屋着のままだった。
「レイ、久しぶり…」
「お、おう……。なんだよいきなり。」
「あのね、ちょっと話したい事があって…今大丈夫?」
「別にいいけど、、部屋入るか?」
「…うん!」
久しぶりのレイの家は昔と何にも変わらなくて居心地が良い。
だからリビングでお話でもいいかな、って思ってたけど親帰ってくるとゆっくり話せないからって、レイが言うからレイのお部屋で話す事にしたんだ。
レイのお部屋は青とグレーが基調のシンプルでいつも整理整頓されている。ベッドの横にはブルーのラグが敷いてありその上に小さなテーブルが置いてある。僕はいつも通りラグの所に座りレイはベッドに腰掛けた。
「で、なんの話?」
「え、えーとね…その…」
「だからなんだよ。」
「えっと……あのね、実は…フェアンと付き合ってるんだ…」
自分で言いながら恥ずかしくて恥ずかしくて中々顔を上げられなかった。レイなんて言うかな、って顔を伏せながら待ってたけど全然返事がないから、あれ?って思ってレイの方をみたんだ。そしたらレイは何かに耐えるように苦痛に歪めた顔をしながら僕を見つめてた。
「レイ……?」
「なんなんだよ、それ。…ありえねぇだろ。」
「……!レイの言いたい事もわかるよ!相手が人間だし、同性同士だし…で、でもね…!」
「違う!!!」
「…えっ…」
「そういうことじゃねぇっ…!なんで、なんであいつなんだよ…」
「ずっと近くにいたのは俺なのに!ずっと見てきたのは俺なのに…!」
「なんで俺がお前のこと好きって気付かねぇんだよ!!」
レイが叫びながら拳をベッドに叩きつけた。
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