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第42話王宮④
コンコンコン
自室の扉のノック音が聞こえる。どうせまた事務処理だろうな、そう思うとどうしても眉間に皺が寄ってしまう。
ーーこんな事をしている場合ではないのに…!
リヒテルは深いため息を一つ零すと返事をした。
「……はい。」
「失礼します!書類をお持ちしました!」
そう言って部屋に入ってきた人物はなんとエリックだった。
「エリック!なぜ君が!」
「リヒテル様……お会いしたかったです!こちらに帰られてきた日以来ですね。急な異動だったので、ろくな挨拶も出来ず……」
兄の秘書の代わりにと書類を持ってきたエリックは沈んだ表情で言った。
「そんな事はいいんだ!……そういえば君は兄の護衛だったか……。」
ふとそばに仕えていた秘書に目線を送ると勘のいい秘書は頭を下げ紅茶をお持ちします、と一言告げた後部屋を出ていった。
ドアがバタンと閉まる音を聞いてからリヒテルは静かに話し出した。
「エリック。君に折り入ってお願いがあるんだ。」
「な、なんでしょうか!私にできる事なら……」
「……待て。じきに秘書が来る。今は言えないんだ……。今日の夜は空いているか?」
リヒテルの真剣な表情にエリックも顔つきが変わった。
「大丈夫です。夜7時には勤務が終わるのでそれ以降ならいつでも………。実は私もリヒテル様にお伝えしたいことがあるのです。」
言い終えると同時にエリックの表情が曇ったことに気が付いたがタイミング悪く秘書がドアをノックする音が聞こえた。
「エリック、では今夜24時に私の自室へ。人払いはしておく。……絶対人に見つかるなよ。」
秘書に聞かれないよう小さな声で話すとその後は何も勘づかれないよう紅茶を飲みながら当たり障りのないひと時を過ごした。
ーーー
コンコンコン
深夜12時、小さなノック音が聞こえる。
「リヒテル様、エリックです。」
「入れ。」
自室へ入ってきたエリックは制服のままだった。
「これが一番怪しまれないかと……。」
確かに制服のままなら夜勤の者と変わらないな、そう感心したがわざわざ勤務を終えてもう一度着替えたかと思うと心苦しく感じた。
「エリックすまないな……。さぁ話がしたい、椅子に座ってくれ。」
そしてタイラーにも話した通り、協力出来るかの確認をした後エリックにもノスティアでの出来事や自分が今後この国をどうしていきたいかを熱心に語った。
「えっ!リヒテル様が……プロポーズ!?」
ーーやはり、そこか……。
内心そうなるだろうなぁと思っていたが案の定プロポーズの所で面食らった表情をしている。
「エリックはタイラーのお墨付きだったが……ちゃんと話を聞いていたのか?」
「も、もちろんです!……あの、お役に立てるかどうかわかりませんが…実は少々タチの悪い噂を聞きまして。」
「?噂?どんな噂だ。」
そしてエリックの口から述べられたのは衝撃的なことだった。
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