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第43話王宮⑤
「実は……異動が決まった日、ルーカス様にご挨拶しようと思ってお部屋を訪ねたんです。それでノックをしようとしたら話が聞こえてきて……」
『結局生きていたのか、リヒテルは。せっかく盗賊を雇ったというのに意味がないじゃないか!!』
『も、申し訳ありませんルーカス様!』
『ちっ……まぁいい。無駄な金になってしまったがな。』
「と言うのが聞こえてきまして……。その後の話は何も聞こえてきませんでした。」
「……!?」
俺はショックで卒倒しそうになった。まさか兄が私を殺そうとしていたとは……。確かに仲が良いとはいえない。しかし血を分けた、ただ1人の兄弟だというのに……。
「それは本当の話なのか……?」
ふらつく頭を押さえながらリヒテルはエリックに尋ねた。
「ドア越しでしたので……。確実な事とは言い切れません。しかしこれは黙っておくことは出来ません。」
「わかった…。ありがとうエリック。……それじゃあ君を信頼してお願いがあるんだが聞いてもらえるか?もちろん内密に。」
「もちろんです!」
エリックには兄が俺を殺そうとしていたという証拠を見つけるようお願いした。まさか自分の命が狙われていたとは……。あの盗賊もたまたまではなく意図的だったということだ。また命が狙われる可能性がある。なるべく早くしなければ。
エリックの話によると、仕事の都合もあるのかエリックとタイラーは話すことも会う事も可能だそうだ。
「では、これから週に一度この時間に各々の調べた事を報告してほしい。タイラーにも伝言してもらえるか?」
「わかりました!その……ルーカス様の事は出来るだけ自分が監視します。ですが、リヒテル様くれぐれもお気をつけて。」
「わかっている。……早く片をつけよう。それになるべく早くあの子を迎えにいかなければ。」
「それってあの……?」
それに答えはしなかったが切なげな瞳で微笑むリヒテルの顔を見ると誰の事かは一目瞭然だった。
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