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第86話
学校を出てスタスタと歩く光生はいつもより少し早くて俺はついていくのに必死だ。
みんなの前では普通だったけどやっぱり怒らせてしまっていたらしい。
「、、、光生っ!」
「ん〜?」
少し後ろを歩く俺は光生を呼ぶがよくわからない曖昧な返事をしてくれるだけで振り向いてはくれない。
そんな状況に俺の目には涙が溜まってくる。
するとすぐに光生はピタッと止まりゆっくりと振り返ってくれた。
「絶対泣きそうな顔してると思った。」
「、、、なんで見てないのにわかったの?」
「涼のことなら見ないでもわかる。」
振り返った光生は寂しそうにしていて俺は直接見ないと光生がどんな顔をしているのかわからないことが悔しくて悲しくて泣きそうになるのを必死に耐える。
「こら、唇噛んじゃったら傷になるよ。」
泣かないように無意識に下唇を噛んでいた俺の顔を光生はツンツンと指で触れた。
「別にいいもん。」
こんな俺のことを心配そうに見つめてくれる優しさについ素直になれずに光生をまた突き放してしまう。
「だーめ。そしたら涼とキスできなくなって俺がすっごい悲しくなっちゃう。」
俺が嫌な態度をとっても光生は怒るどころかいつもより優しく俺のほっぺたをスリスリと指で撫でてくれる。
「ね?ほら、お願い。」
チラリと顔を見れば光生は困った顔で笑っていて気づけば俺は道端で光生に抱きついていた。
「え!?ちょっと急にどうしたの!?」
こんなに人が通る所で俺が抱きつくと思っていなかったのか光生はびっくりしている。
「光生、、ごめん。俺、光生に食べさせてあげるの恥ずかしくてつい酷いこと言っちゃって、、。それに何も考えずに苺ちゃんには俺、食べさせちゃったし、、、」
俺は抱きついたまま必死に話すと光生は俺の腰に手を回してギュッときつく抱きしめた。
「俺より苺ちゃんのことが好き?」
そう聞いてきた光生の声は少し震えている気がしてすぐに顔を横に振って否定する。
「光生のほうが好き、大好きだから、、俺、恥ずかしくてつい冷たくしちゃって、、光生はいつも俺に優しくしてくれるのに、、、ごめん、、」
自分の気持ちを上手に伝えたいのにうまく言葉がでてこない俺を急がすことなく、うんうんと相槌を打ってくれる光生はどこまでも優しい。
「ふふっ、そっか。俺のことのほうが好きなんだ?」
「うん。俺、大好きなのに光生に悲しい顔させちゃった、、。」
「ねぇ、見て?俺が悲しい顔してる?」
光生は俺の体をぐいっと離して見せてきた顔はいつもの余裕のある勝ち誇ったような顔でふふっと笑っていた。きっと俺が気にしていることに気づいて見せてくれたんだろう。
「してない、、っていうか顔近い!!」
至近距離で見せられた顔はやっぱりかっこよくてドキドキしてしまう。
「はははっ、赤くなってる!」
いつものように俺をからかいだした光生は楽しそうで俺はなんだか嬉しくなった。
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