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第106話 光生side

目が覚めると通話中のままのスマホを見て寝落ちしていたことに気づき頬が緩む。俺のわがままに付き合ってくれる涼の声を聞きながらぐっすりと寝ればほとんど風邪が治った気がする。 そのまま涼を起こしいつもの場所で待っていると少しして涼が走って来る。 「ごめん!待った?」 「んーん。俺も今来たとこ。」 「ねぇ、熱は?ないの?」 突然涼は俺のおでこやら首やらに手を当ててくる。昨日はただ体がだるかっただけでそんなに重症でもないのに心配してくれる涼に嬉しくなる。 「ふっ、ないって!」 「えー?でもなんか熱くない?」 そう何度も涼にあちこち触られると体は自然と熱くなっていくに決まっている。この距離の近さに耐えながら俺が今どれだけ涼に触りたいと思っているのか知らないらしい涼はお構いなしに近づいてくる。 「涼が触るから熱くなってんの。」   「え?俺?」 限界がくる前に涼の手をとりゆっくり体から離すとあまり意味が伝わらなかったのかきょとんとしている。 「そういえば、これあげる!」 突然何かを思い出したかと思えばコンビニの袋を渡され中を見ればいろんな種類ののど飴が入っていた。 「え?買ってきてくれたの?」 「うん!昨日電話した時声が少し枯れてたから、、でもどの味がいいかわからなくて迷ってたら遅れちゃって、、ごめんね、、」 今ここが家なら絶対に押し倒してキスしている。上目遣いで謝る涼の顔を見れば俺の体はまたさらに熱くなっていく。 「ありがとう。すっごい嬉しい。」 「へへっ、よかった!」 俺のためにわざわざ買ってきてくれたことが嬉しくて袋の中にいっぱい入っている飴を見ていれば涼は俺に近づき一緒に覗き込む。 「好きな味ある?」 少し不安そうに聞いてくる姿がたまらなく愛おしい。 「ん、全部俺の好きな味。」 俺の返事を聞けば涼は嬉しそうに歩きだす。そんな姿を後ろから見ながら学校に行くこの時間がやっぱり大好きだ。サラサラと髪を風になびかせる涼をぼんやり見ていると、ふと入学式の日の朝にここで出会ったことを思い出しなつかしくなる。 「光生早く!おいていくよ!」 さっきまで風邪を引いている俺を心配してくれていたのにゆっくりと少し後ろを歩く俺を振り返って見れば頬を膨らませて怒っている。 「はいはい。おいていかないでよ。」 立ち止まって待ってくれている涼のところまで行けば不思議そうに見つめてくる。 「なんかさっき良いことでも思い出してたの?」 「え?なんで?」 「俺が振り返った時の光生の顔なんか幸せそうに微笑んでたから!」 俺は涼にこの場所で一目惚れしたことを思い出し無意識にそんな顔をしていたらしい。 「ん?あぁ、丁度この辺だったなって思って。」 「え、なにが?」 「ふふっ、秘密!」 「えー!なんで!?教えてよ!」 何回聞かれても教えない俺に隣で不満そうに怒る涼の機嫌をどうやって取ろうかなんて考えながら教室に入ればなぜか星くんが涼の席に座っていて俺の機嫌は一気に悪くなる。

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