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第105話

体育館を出て帰ろうとスマホを取り出すと光生から返事がきていた。大丈夫?と今朝送ったメッセージに今日時間あったら電話したいとだけ返ってきていて俺は急いで家に帰る。 いつでもいいよと送ってしばらく待っていたけど電話はかかってこない。ご飯を食べお風呂に入りベットに寝転がれば眠たくなってきて今にも寝てしまいそうなくらいうとうとしていたら突然スマホが鳴った。 「光生!?大丈夫?」 「ふふっ、電話に出るの早くない?」 光生の声を1日聞いていなかっただけなのにいつものように笑う声を聞くのがすごく久しぶりな気がして胸がギュッとなる。 「だってなかなか電話がかかってこなくて心配しながら待ってたんだもん!」 「ごめんごめん。俺も早く電話したかったんだけどね、、」 笑って謝る光生の声は掠れている。 「光生きつそう、、すごい鼻声だし、、」 「そう?そういえば涼に風邪移ってない?大丈夫?」 この状況で自分のことより俺の心配をするのが光生らしい。いつもこうやって俺のことを気にかけてくれていることが伝わってくるたびに光生への気持ちは大きくなっていく。 「全然大丈夫!今日だって放課後星くんの試合観に行ったし俺は元気だよ!」 「……は?試合?」 「そう!星くんと朝学校行ってる時にバスケの試合に誘われてしょーこ先生と観に行ったらすごい上手でびっくりしたんだから!」 「……朝ってもしかして一緒に学校行ったの?」 「そうだよ?たまたま会って、、そういえばしょーこ先生が光生もバスケ上手だって言ってた!」 「ん?あぁ、中学の時バスケ部だったから。それで試合終わって星くんと一緒に帰ったの?」 そんな初耳な話をもっと聞きたいのに自分のことに興味がないのかさらっと流される。 「帰ってないよ!1人で帰ろうとした時に光生からの返信に気づいて急いで帰ったんだから!」 「あ、そうなの?てか試合終わってから星くんと話した?」 「少し喋ったけど、、って光生さっきから星くんのことばっかり!!」 さっきから星くんのことばかり質問をしてくる光生に少し大きな声で文句を言ってしまう。 「なんで涼が怒ってんの。どちらかというと怒るの俺のほうじゃない?」   「……だってせっかく電話できたのに、、」 なんで光生のほうが怒る側なのかわからないけど俺は気にせずにいじけたまま話し続ける。 「俺、電話かかってくるの帰ってからずっと楽しみに待ってたのに、、光生遅いんだもん、、それにずっと星くんの話するし……」 「ん、ごめんね。本当は俺もすぐに電話したかったんだけど、、」 途中で少し気まずそうに話をやめられるとその続きが気になってしまう。 「……したかったけど?」 「……こんな遅い時間に悪いなと思ったんだけどどうしても涼の声聞きながら寝たくて、、本当にごめんね、俺のわがままで嫌な思いさせちゃったね。涼ずっと眠たそうな声してる。」 今まで聞いたことがない悲しい声で話す光生はひとつも悪くないのに俺は謝らせてしまったことに後悔する。 「ごめん、俺なにも考えずに光生に酷いこといっぱい言って、、勝手にいじけて怒って俺最低だよね。本当ごめんね、、。」 「んーん。謝らないでよ。」 「でもっ、、光生は何も悪くないのに俺、、」 いつも光生は俺に優しすぎるくらい優しくしてくれて今だってそうだ。 言葉に詰まる俺に優しい顔で微笑んでくれているのが電話越しにわかってしまう。 「本当は寝る直前だったんだろうなって最初から気づいてたんだけど電話に出てくれたときに俺の名前呼んでくれたのがなんかすごい嬉しくてさ、早く電話切って寝させないとだめだって思ってるのに俺もっと涼の声聞きたくなって、、1日会ってないだけでこんなに余裕なくしてすごいダサいね俺。」 余裕がないのは俺だって同じだ。さっきよりも元気がなく掠れた声で話す光生は風邪だからなのか落ち込んでいるからなのかわからない。 「光生っ!」 「ん?」 名前だけを呼ぶ俺に光生は不思議そうに返事をしてくれる。 「光生のこと何回でも呼ぶから、その、、そんなに寂しそうにしないで、、」 「ふふっ、ありがと。じゃあまた寂しくなったらすぐ涼に名前呼んでもらおうっと!」 いつものように笑ってくれた光生に俺はホッとした。 「明日一緒に学校行こうよ。」 「え!?まだ休んでたほうがいいって!」 「休むわけないでしょ。さっきあんな話聞かされたんだから。」 「さっき?なんの話?」 なんのことを言っているのかわからずに聞いてみるけど光生は教えてくれない。いつのまにかいつも通りに戻っていた光生といろいろと話せば電話をしたまま俺たちは同じタイミングで寝落ちしたらしくスマホから響く光生の声で起きればもうすでに朝になっていた。

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