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第147話 光生side
「遅かったね。大丈夫?」
トイレから戻ってきた涼の顔が少し赤くなっている気がして心配になり聞いてみる。
「光生……」
「ん?なんかあった?」
「あっ、いやなんでもない!」
首を横にブンブンと振る涼が気になるけど俺の勘違いかもしれないししつこく聞くのもどうなのかなと思いニコッと笑えば涼の表情は少し柔らぐ。
「……光生と話すと落ち着く」
「なに急に。やっぱりなんかあったでしょ?」
「んーん、光生の顔見たら安心しただけ!」
朝は俺の顔を見れないなんて恥ずかしがっていたくせに今はそんなことを言うなんて絶対になにかあった気がする。授業中もいろいろと考えてみるけど検討もつかずあっという間に昼休みになってしまった。
「光生〜、おなかすいたね!」
「うん、俺ずっとお腹鳴ってた。」
「んふふっ、授業中聞こえてたよ!あっ、俺飲み物買ってくるから待ってて!」
そんなの俺が買ってくるのに涼はそのまま走って教室を出ていってしまった。ていうか今の笑い方すごいかわいかったな。
「さくらちゃんいるー?」
それからすぐにドアの方から聞き覚えのある声がして見てみれば星くんが立っていた。ばっちり目が合うとこちらに向かってきて涼の席に座る。
「あれ?さくらちゃんは?」
「飲み物買いに行った。」
自分でも無愛想だなとは思うけど星くんはライバルだからしょうがない。
「そっか〜、椎名くんってさくらちゃんと仲良いよね!」
「まぁ、それなりに。」
「さくらちゃんってついからかいたくなるよね!からかったときの顔も反応もかわいいし!」
これは俺が涼のことを好きだと知っていてわざと言っているのだろうか。それにさっきからさくらちゃんさくらちゃんって名前を呼びすぎなことにイラッとくる。
「あんまり涼のこと困らせないでね。見ての通り素直で純粋だから仲の良い俺としてはすっごい心配。」
「あははっ、椎名くんって過保護だよね!」
笑いながらそう言われるとバカにされている気分になるけど過保護になるのなんて当たり前だ。あんなにかわいいのに自分のかわいさに気づいていないんだから。
「で、涼になんか用事があったんじゃないの?」
「あ〜、、さくらちゃんに朝のこと謝りにきたんだけど、、」
少し気まずそうにする星くんを見てすぐに今朝の涼のことを思い出した。星くんが絡んでいるとなると何があったか聞かずにはいられない。
「朝?」
「いやそれがさ〜朝トイレで会った時さくらちゃんの見てかわいいねって言ったら怒っちゃったから、、」
「……は?」
突然のことに理解が追いつかず星くんの言葉が何度も頭の中で勝手に繰り返される。涼のを見たなんてどういう状況だったのかわからないけど俺の機嫌は一気に悪くなる。
「ふふっ、椎名くんってさくらちゃんのことになると怖いくらい態度にでるよね!そんなに好きなんだ?」
「うん、すっごい大好き。毎日一緒にいても足りないくらい大好き。」
「そっかそっか!俺もさくらちゃんのこと大好き!」
喧嘩でも売っているのか笑いながら大好きと言う星くんに腹が立つ。俺の方が好きだしそもそも俺のものだ。
「あははっ、そんな怖い顔しないでよ!そんな顔してたらさくらちゃんが心配するんじゃない?」
「俺が涼の前でこんな顔すると思う?」
「ははっ、そうだよね!するわけないか!」
返事をするのもだるくてニコッと作り笑いをすれば星くんにはバレているらしく何も言ってこない。
「光生!遅くなってごめん!」
どんなタイミングで帰ってくるんだと思わずツッコミたくなるほど今の状況でここに涼がいるのはよろしくない。
「えっ!なんで星くんがここにいるの!?」
「さくらちゃん朝はごめんね!怒らせちゃったかなと思って謝りにきた!」
「あっ、いや、怒ってないけどびっくりしちゃって、、俺の方こそごめんね、、」
「さくらちゃんが謝んないでよ。じゃあ俺そろそろ戻らないと!またね!」
涼は手を振った後ニコニコして俺の方を見る。
「光生のも買ってきたからあげる!」
へへっと笑いながらリンゴジュースをくれる涼を今すぐに抱きしめたい。涼の声を聞いた星くんは教室を出る前に振り返りまた戻ってくる。
「さくらちゃんたまにはカフェオレも飲んでよね!」
そう言って涼の手からリンゴジュースを取って帰って行った星くんはきっと嫉妬していてそれに気づいていない涼はぽかんとした顔で見ている。
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