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第165話

あれから結局光生とちゃんと話せず放課後になるとすぐに星くんが教室にやってきた。1人で帰ろうとする光生に話しかけようとすればたくさんの女の子に一瞬で囲まれそのまま教室を出て行ってしまう。 「椎名くんモテモテだね!」 「うん、、いつも女の子に呼び出されてる、、」 きっとその度に告白をされているんだろうけど光生は俺にどんなことがあったか言ってこない。いつも呼び出されて帰ってきたときには俺にニコッと優しく笑いかけてくれるだけだ。 「ねぇ、さくらちゃんってステージ7のボス戦クリアした?」 光生が出て行った場所をボーッと見ていると星くんは俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。 「え?そこなら何回かしてクリアできたよ!」 「まじ!?すごいね!俺、何回やってもできなくてさくらちゃん早く手伝ってよ!」 いつだって元気な星くんは俺のことまで明るくしてくれる。話しながら帰っていると見るからに高級そうなマンションの前に着き思わず息をのむ。 「ここが俺の家!さくらちゃんの家からはちょっと遠い?」 星くんは平然と話しているけどお金持ちだったらしい。 「こんなすごいところに住んでるの!?」 「あははっ!そんなに驚く?」 エントランスなんて広くて豪華でなんかキラキラ光っている。 「なんでそんなに固まってるの!さくらちゃんは相変わらずおもしろいね!」 「だってこんなところ来たことないし、、、って1番上の階!?」 エレベーターに乗れば最上階のボタンを押す星くんに驚く。 「わっ、びっくりした!突然そんな大きい声出さないでよ!」 何が面白いのか星くんは大爆笑している。そういえば初めて話したときもこんな感じで大きな声で笑っていた。 「星くんのほうが声大きいもん……」 俺のことで笑われるとなんだか恥ずかしくなっていじけてしまう。 「あははっ!今のは絶対さくらちゃんのほうが大きかったって!」 明るく笑う星くんを見てきっと光生ならいつもみたいに「ふふっ」って笑ったあと「そうだね。俺の方が声大きかったね。」って言って拗ねる俺に優しい顔をして頭を撫でてくれるんだろうななんて考えてしまう。でもだめだ。光生のこと怒らせちゃったしもう俺のことなんて嫌いになったかもしれない。 「さくらちゃん高いところ平気?」 「え?」 そんなことを考えだしたらどんどんネガティブになっていく。今ごろ女の子達といるのかななんてモヤモヤしていれば突然星くんに話しかけられ指を刺している方向を見る。するとガラス張りのエレベーターはどんどん上に上がって行っていた。 「まって!星くん!!俺高いところ苦手!!」 咄嗟に星くんの腕を勢いよく掴んでしまいすぐに離すとまた大爆笑している。 「ごめん!腕痛かったよね?」 「あははっ!さくらちゃんって本当に見てて飽きないね!なんかすごい構いたくなる!」 「ぇえ!?俺!?」 俺のどこが構いたくなるのかわからない。それにこれは褒めてくれているのかすら謎だ。ゆっくりと開くエレベーターを出て星くんに着いて行けば1番奥の大きなドアを開けた。 「わぁー!星くんの家すっごい!」 想像を通りこすほど豪華な家で玄関なんて広くてピカピカできっとこれは大理石だ。それに廊下なんて長すぎて向こうの部屋まで見えない。 「あははっ!連れて来てよかった!」 「え?」 「俺、さくらちゃんのキラキラした顔見るの大好きだから!」 なんで俺の顔?なんて思っていれば目の前に立たれ顔を固定するように両手でほっぺたを触られる。その近さにびっくりして声が出ない。 「前にバスケの試合観に来てくれた時も同じ顔してた!だからあの日シュートいっぱい決まったんだよ!」 そう言ったあと頭をポンポンと撫でた星くんは部屋に向かう。同じように頭を撫でられても光生とは全然違うその感触に胸が苦しくなる。光生はいつも俺のことを優しすぎるくらいにそっと触れてくれていたことに今になって改めて気づく。

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