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第172話 光生side

「俺からすれば1ヶ月も、、なんだけどな〜」 涼を送り1人で家に帰っている今も頭の中は同じことばかり考えている。 あれから夢は彼氏に会うと言ってどこかに行ってしまった。帰りにコンビニに寄ると無意識に涼の好きなものばかり手に取っていることに気づく。これを持って行って謝ろうとお店を出れば偶然にも涼と星くんがいて気づけば向かって歩いていた。 「星くんと何話したんだろ……」 後でねとわざと強調した星くんにイラッとくる。それに部活を観に行くと楽しそうに話す涼に結局謝れなかった。でもあの状況で星くんの家に行って欲しくなくて嫉妬して怒りましたなんて言えない。 優しい涼のことだから謝れば絶対に許してくれるんだろうけどまた気をつかわせて我慢させてしまう。もうどうすればいいのかわからない。結局何の解決もしないまま家に着いてしまった。 「はぁ〜、涼に触りたい。」 いっぱい触って涼のことを怒らせたいしそれに拗ねれば絶対に俺のことを甘やかしてくれる。存分に甘やかしてもらったら一緒にお風呂に入って同じベッドで寝てあのかわいい寝顔をずっと見ていたい。 そんなことを考えても叶うはずもなく部屋からボーッと外を眺めているとスマホが鳴る。どうせ夢かよくわからない女の子だろうとチラッと見れば予想は当たりだ。 「ちょっと!電話に出るの遅すぎ!」 「どこが?てかそんなに大きい声で話さなくても聞こえるから。」 電話に出るとまた怒っている夢に少し文句を言えばその倍以上に返ってくる。 「聞こえてないでしょ!さっき星くんからさくらちゃんが部活観に来てくれるって連絡きたんだけど!もしかしてまだ謝ってないの!?」 人がせっかく考えないようにしていたことを耳元でしかも大きな声で言ってくるなんてどれだけ俺の傷をえぐる気だ。 「……もうバスケ部しばらく活動休止にしてくれない?」 「はぁ?何言ってんの?」 夢は心底呆れた声を出すけど割と本気でそう思ってる。そうすれば涼と一緒に帰れるし星くんに取られる心配もない。 「私はさくらちゃんが部活に来てくれるの嬉しいからいいけどあんた本当にどうなっても知らないからね!」 そう言って勝手に切られた電話にムカついてスマホをベッドに投げればまたすぐに着信音が鳴る。 「夢のやつ何回かけてくんの。」 もう何もかもめんどくさい。そのまま少し放置していても鳴り続けていていっそのこと電源を切ってやろうとスマホを手に取れば涼の名前が表示されていてすぐに出る。 「涼?どうしたの?」 普段はあまり電話をかけてこないからなにかあったのかとかもしかしてこのまま振られるんじゃないかとか心配になってきた。 「…あっ、いやどうもしてないんだけど、、」 「そっか、よかった。」 心の底からホッとする俺はやっぱり必死でめちゃくちゃカッコ悪い。 「………あの、、さっきはありがとう、、お礼言ってなかったから、、」 「え?あぁ、帰り道だったしそんなの気にしなくていいよ。」 だめだ、大好きなその声を聞けば今すぐにまた会いたくなってしまう。いつもより少し元気のない涼はやっぱり俺のことなんて嫌いになってしまったのだろうか。 「それもだけど、、俺の大好きなものばっかり入ってた、、」 いつもみたいにかわいくて明るい涼の声が聞きたいのになんでこんなにも寂しそうなんだろう。 「ふふっ、それならよかった。月見ながらお団子食べた?」 「うん、光生がくれたもの全部食べたよ、、」 少しでも笑って欲しくてそんなことを聞いても涼はいつものように笑ってくれない。 「あははっ、もう食べたの?じゃあまた買わないとね。」 またなんて言って涼といられる約束をわざと勝手にする俺は卑怯だ。これじゃまた夢に怒られてしまう。 「……光生…今度は一緒に食べられる?」 「……え?」 その言葉をすぐに理解できずに一瞬止まれば涼は慌てた様子で謝る。 「ごめんっ!やっぱりなんでもない!俺今からゲームするからまた明日ね!」 そう言ってさっきの夢みたいに一方的に電話を切られてしまった。今度はってもしかしてさっき俺と一緒に食べたかったのだろうか。言葉の意味を聞きたいのに今から星くんとゲームをするらしい涼の邪魔なんてできるはずもなくまた大きなため息がでた。

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