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第206話 光生side
「ごめん、いつのまにか寝てた。足痛かったでしょ?」
「全然!それにまだ30分くらいしか経ってないよ?もっと寝てていいのに!」
ほっぺたをスリスリと撫でてくれる涼はさっきからずっと甘やかしてくれるから寝ている時間がもったいない。できるだけ長く涼に甘えたい。
「だめ。今から涼とお風呂入るから。」
「え?莉緒ちゃん達いるし一緒に入らないって!」
そんなこと一緒に入らない理由になんてならない。突然コンコンと鳴る扉の向こうから母さんの声がする。
「2人とも一緒にお風呂入るでしょ?涼くん入浴剤好きだって聞いたから泡風呂にしてみたの!気に入ってくれるといいんだけど、、」
涼は嬉しそうに立ち上がるから乗せていた俺の頭はゴツンと床にぶつかる。そんなことに気づかないくらい嬉しかったのかドアを開け母さんにお礼を何度も言う涼がかわいい。
「光生!なんでまだ寝てるの!?早く一緒に入ろうよ!」
さっきと言っていることが全く違っていてそんなところもかわいくてしょうがない。お風呂場に行けばもっこもこの泡で覆いつくされていた。
「わぁー!!すごい!俺泡風呂なんて初めて!」
「なんだこれ。どんだけ泡立ててるの。」
「いいじゃん!光生早く洗って入ろうよ!」
まぁ涼がキラキラと顔を輝やかせて喜んでいるからいいか。
「んふふっ、光生にいっぱい泡あげる!」
さっきから俺に泡を乗せては嬉しそうにはしゃぐ涼を見れるなんて最高の誕生日だ。
「ふふっ、ありがと。」
泡に包み込まれ無邪気に笑う涼に見惚れていると抱きついてくる。
「光生お誕生日おめでとう!生まれてきてくれて俺と付き合ってくれてありがとう!これからもずっと大好き!」
こんなに幸せでいいのだろうか。涼に出会ってから初めて知っていくいろんな感情に戸惑うばかりだ。
「俺の方こそありがとう。こんな幸せな誕生日初めて。」
ギュッと抱きしめ返せば涼は体をビクッと揺らす。
「………光生のばか、、」
涼は顔を赤くし目をギュッと閉じている。
「いや、この状況で勃つのなんて当たり前でしょ。」
大好きな人に裸で抱きしめられて何もならないわけがない。わざと勃ったものを当てれば涼はまた離れていってしまった。
「………今日は本当にだめだよ、、こんなに光生のお母さんにも莉緒ちゃんにも良くしてもらったのにこっそりえっちなんてできない、、」
「ふっ、涼のそういうところすごい大好き。」
俺の家族のことを考えてくれる涼はどこまでも優しくて温かい。
「俺も光生のこと大好きだよ、、」
えへへっと恥ずかしそうに笑う涼に我慢できなくなりそうで気を紛らわせるために泡をすくい鼻にチョンッとつけてみるけど余計にかわいいだけだった。
「んふふっ、光生もおそろいにしよ!」
同じように鼻に泡をつけてくれる。もうやばいくらいに幸せだ。
「……光生にくっついてもいい?」
チラッと見ながら不安そうに聞く涼はどれだけ俺のことをドキドキさせれば気が済むのだろう。
「ふふっ、いいよ。」
腕を広げれば少し近寄ってまた恥ずかしそうにチラッと見てくる。
「……抱っこでもいいの?」
もうだめだ。さっきからかわいいのにそれを更に超えてくる。ていうか抱っこするつもりで腕を広げたんだけど。
「あははっ!当たり前でしょ!」
ぱあっと嬉しそうに笑う涼は向かい合うように遠慮がちに乗ってくる。
「へへっ、なんか緊張しちゃうね、、」
なんだそれ。こんな煽るようなことばかり言って俺のことを試しているのだろうか。
「ふふっ、なんで?いつももっとえろいことしてるじゃん。」
「それはそうだけど、、だって、、」
少し拗ねた涼はかわいく口を尖らせる。
「だって?」
「だって、、今日は光生の誕生日で特別な日だから、、」
恥ずかしいのかモジモジしながら涼は見つめてくる。
「……俺、付き合ってる人の誕生日を一緒にお祝いするの初めてだから、、どうしたらいいかわかんなくて、、って変だよね!ごめんっ!!」
慌てて離れようとする涼にたまらなくなりグイッと引き寄せる。
「わっ!!光生、、!!」
「俺も初めてだよ。付き合ってる人に祝われるのも大好きな人に祝われるのも全部初めて。」
「……え?」
「俺だって幸せすぎてどうすればいいかわかんない。」
こんなことに慣れていないのはきっと俺の方だ。
「……じゃあ、ちゅーする?」
首を傾げてそんなことを聞く涼は俺の頬をそっと両手で包みキスをした。
「えへへっ、勝手にしちゃった!」
やっぱり涼との約束を破って襲ってもいいだろうか。今からずっと俺はそんな葛藤をしなければいけないらしい。
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