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第252話 光生side

(ハル)くん!!」 誰だこいつは。馴れ馴れしく俺の涼に触ったくせに悪びれる様子もない。 「あっ!幼馴染の遥くん!家も近くて幼稚園から中学まで同じだったんだよ!」 不機嫌な俺に気づいていない涼は初耳なことをスラスラと教えてくれる。 「工藤 遥(クドウ ハル)です。初めまして。」 会釈をするそいつは男の俺から見てもかっこいい。なんか爽やかなのに男らしそうな感じが嫌なほど伝わってくる。 「光生って言うの!同じクラス!」 名前を言わない態度の悪い俺なんて気にせずに涼は嬉しそうに紹介している。 「あぁ、あのイケメンの。学校の女子が騒いでた。近くの高校にすっごいかっこよくてめちゃくちゃモテる人がいるって。椎名光生くんでしょ?」 これは嫌味を言われているのか褒められているのかどっちなのだろう。 「ぇえ!?遥くんの学校にまで光生のファンがいるの!?」 そんなことはどうでもいい。さっきから気になるところが何個もあるけどまず遥くんと呼んでいるところが気に食わない。ていうか名前を呼び合ってる時点でむかつく。 「光生モテモテだ、、」 拗ねているように見えるのは俺だけだろうか。今すぐに聞きたいのに遥くんがいるせいで聞けない。 「最近連絡してなかったけど元気だったの?涼のことだからどうせ毎日寝坊してるんでしょ。」 ナチュラルにマウントを取られているような気がするのは気のせいだろうか。 「元気だよ!寝坊はするけど、、光生にたまに起こしてもらってるし!」 「ふっ、世話してくれる人がいてよかったじゃん。」 なんか気に入らない。うまく言えないけど俺よりも涼のことを知っていますみたいな空気が嫌だ。 「そういえば(レイ)ちゃんも元気?」 今度は一体誰だ。俺の知らない話をする遥くんはきっと涼とすごく仲が良い。 「たぶん元気だと思う!最近帰ってきてないから知らないけど!」 帰ってきてないなんて言う涼に首を傾げればニコッと笑ってくれる。 「俺のお姉ちゃん!光生に言ってなかったっけ?」 いやそんなこと一言も聞いていない。さっきから情報が多すぎて何も処理しきれていないし涼のことを俺より遥くんが知っていることにむかつきすぎて話が一切入ってこない。 「あっ、俺もう行かないとだからまた連絡する。」 ヒラヒラと手を振りお店を出て行った遥くんを涼は笑顔で見送る。 「ねぇ、涼と遥くんってどんな関係?」 「え?だから幼馴染だって!」 いや幼馴染にもいろんな種類がある。どのくらいの仲の良さなのか知りたいのに涼はクレープに夢中らしく何事もなかったかのようにまた嬉しそうに頬張る。 「光生も食べて!」 あんなに迷っていたクレープの1番食べたいであろうチーズケーキをスプーンですくい俺に近づけてくる涼は優しすぎる。 「光生?やっぱりチョコレートのほうがよかった?」 食べない俺に不安そうな顔をする涼を今すぐに抱きしめたい。スプーンを持って止まっている手を握りそのまま食べればまた顔を赤くしている。 「なんで照れてんの。」 「……だって光生が触ってくるから…」 普通ならいつも会っている俺なんかより久しぶりに会った遥くんのことを考えていてもおかしくないのにそんなことを言われるとやっぱり浮かれてしまう。

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