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第251話 光生side
「光生!早くしないと売り切れちゃう!」
1日中ソワソワしていた涼はどれだけクレープを楽しみにしているんだ。いつもなら俺の方が帰る支度を早く終わらせているのに今日は涼の方が早い。
「はいはい、そんなすぐに売り切れないから。」
「売り切れるって!すっごい人気なんだから!」
急かす涼がかわいくてわざと遅くしていれば拗ねたのか唇を尖らせる。
「………光生と一緒に食べたかったのに。」
「……え?」
「光生と放課後どこかに出かけるの初めてなのに。全然急いでくれないし楽しみじゃなさそう。」
フンッと顔をそらし怒る涼ににやけるのが止まらなくて咄嗟に口元を手で覆う。確かにいつも家に直行だったしちゃんとどこかに行ったことはない。
「楽しみじゃないわけないでしょ。朝からずっと涼とどの味食べようか考えてたんだから。」
チラッと疑いの目で見てくる涼にまた簡単に心を奪われる。
「はい、準備できた。待たせてごめんね。」
頭を撫でれば顔を赤くし俯く。いつでもこうやって恥ずかしそうにしてくれるからつい触ってしまう。
「………ここ教室だよ。」
俺からすれば教室だろうと人がいようと関係ない。でも涼を困らせるわけにもいかないからそっと手を離す。
「ふふっ、ごめんね。ほら早く売り切れる前に行こ。」
それから学校を出て少し歩けば行列ができていてすぐにそこがクレープ屋だとわかった。
「わぁー!光生すごいね!やっぱり人気だ!」
はしゃぐ涼と列に並ぶ。こうしてると付き合ってる実感がなんだか湧いてきて嬉しくなり隣りを見ればそんな俺の気持ちなんて全く気づいていない涼はまだ真剣な顔をして悩んでいる。
「ふふっ、どれで悩んでるの?」
「え?あっ、フルーツ乗ってるやつかチーズケーキ乗ってるやつ、、」
かわいすぎる悩みに今日も気持ちが温かくなる。
「じゃあその2つにして一緒に食べよ。」
「え!?だめだよ!光生はチョコレートが好きでしょ?」
「んーん、今日はチョコレートの気分じゃないからいいの。」
涼がおいしそうに食べている姿が見られれば満足だ。
「……光生、、いつも優しくしてくれてありがとう、、」
今にも襲いたくなるかわいい顔で見上げてくる涼のほっぺたをムギュッと強くつまむ。
「今そんな顔しないで。この前からずっと我慢してるんだから。」
「え?我慢って?やっぱりチョコレート食べたかったの?」
どこまでも鈍感な涼はなにもわかっていない。触りあいたいなんて思っているのはきっと俺だけだ。
「わぁー!光生見て!クレープ作るのすごい上手だ!」
注文をして待っている間、涼はずっとガラス越しにクレープを作っているところを見ている。
「ふふっ、本当だね。」
涼の視線をひとりじめするなんて納得いかない。それなのに店員さんは涼と目が合うとニコッと笑う。やっぱり涼は気づいていないだけできっとモテてきたんだと思う。それからクレープを受け取り席に座る。
「いただきまーす!」
口いっぱいにクレープを詰め込む涼はキラキラした顔で俺を見る。
「んーっ!!おいしすぎる!光生も食べて!」
口元に生クリームをつけている姿がかわいい。そっと手を伸ばし指で拭おうとすれば俺たちの目の前に他の高校の制服を着た人が現れる。
「涼!久しぶり!相変わらずだね!」
そう言って俺よりも先に涼の口についている生クリームを指で拭いとったその人はそのままペロッと舐めた。
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